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4ー13

 エスカレーターを登り切ると、二階の映画館入口近くに到達する。周辺には書店、カフェなどがある。

 これらの店をひとつひとつ覗いてツバキ・スズメさんを探すのは骨が折れる。体力的にも時間的にも厳しいものがある。

「二階にやって来たはいいものの、どこを探せばいいのやら……」

 私は途方に暮れた。

「考えてみましょう。竹刀を手に入れた彼女が次に向かうのは……」

「オオタカくん。『竹にスズメ』を過信しない方がいいのでは?」

「シュロ・スズメさんのことを言ってますね? あの人とはたまたま考えが合わなかっただけです。現に相性もよくないと『比翼連理』に診断されましたし」

「そういうものでしょうか」

 現時点ではそれにすがる他ないのかもしれない。いくら「比翼連理」があるとはいえ、これだけの人の中から何のヒントもなしにたった一人の女性を探し出すのは無理がある。

「着実に近づいている……はずなんだけどなあ」

「だけど、これ以上どう進んだら……」

 この状況を変える手があるとすれば、それは……。

「モールコンの参加者は全員レイダンの会員なんですよね。モナミさんは誰がどういう比翼連理ネームなのか、把握してないんですか」

 オオタカくんもそこに考えが及んだか。

「ごめんなさい。あいにく私にも知らされていないんです」

 知っていても教えるのはタブーだと思うが。

「そんな。大師……難易度高すぎだよ……」

 二人で頭を抱えていると、映画館の方から誰かが近づいてきた。

「モナミさんと、カキ・オオタカさんですね。二人で何をなさっているのです?」

 私たちに話しかけてきたのは、ロゼだった。

「何か問題でも?」

「いや……なんというか……」

「映画を観るのはダメですよ。禁止にしています」

「そんなつもりはないよ。ロゼはここで何してるの?」

「私は見張りです。あれだけ言ったのに映画館に入っていく人がいて」

「そんな人いるの?」

「ええ。先程もクワ・クジャクさんとモミ・フクロウさんの一組が映画を観ようとしたので、止めたところです」

「カップル成立したんだね!」

「ええ。それは喜ばしいことですけど……」

 私がくだけた調子で話しかけても、ロゼは態度を崩さない。おそらくこういう人なのだ。

「それで、モナミさんは何を?」

「えーと……」

 ロゼはオオタカくんに目を移した。

「まさか、彼につきっきりでサポートしているのですか?」

「それは……」

「答えてください。なぜそんなことを?」

 ロゼの追及はやまない。私は観念して、ジョー大師から任されたことを話した。

「……ジョー氏ですか。またイレギュラーなことを……」

「すみません……」

「モナミさんが謝ることじゃありません。たまに、我々も彼の考えについていけなくなることがあるので」

「だよね。私も大師の著書を読んできたけど、相性の良し悪しをどういう基準で決めてるのか、さっぱり」

「このことは私の方からあとできつく言っておきます。しかし、無視できることでもありませんね。ジョー氏がそこまで太鼓判を押す相性とは何なのか、たいへん興味があります。モナミさんはこのまま彼のサポートを続行してください」

「え、いいの?」

「いやなんですか?」

 私はあわてて首を振る。

「ううん。分かりました」

 話が終わり見張りに戻ろうとしたロゼを、オオタカくんが呼び止めた。

「すみません。彼女が映画を観てるってことはないですか?」

 ロゼは答える。

「それはないです。我々は参加者の端末の現在位置を常にチェックしています。映画館に長時間居続けた反応の報告は上がってきていません」

「そんなことできるんですか! ということは、ロゼさんは知ってるんですね? 彼女が誰で、今どこにいるのか」

「それを教えると、あなたのモールコンの意義が失われます。とたんに運命の出会いの価値もなくなるでしょう」

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