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4ー12

 特に誰かと出会うこともなく、私たちはスポーツ用品店に着いた。これで、一階の端から端までを歩いたことになる。

 入口から中へ入ると、そこにはランがいた。

「あら!」

「あらあら、モナミじゃない。お疲れさま」

「お疲れさま」

「どう? 調子は」

「結構楽しいよ。エンジョイしてる人がいっぱいいて。あ、地図がすごく役に立ってる」

「それはよかった。私は、知り合いに話しかけられることが多くて」

「相変わらずだね。どうしてここへ?」

「ちょっと人がいない所に避難しに、ね。そういうモナミは?」

「私は……彼、オオタカくんのモールコンを最後まで見届けるようにジョー大師に言われて……」

 とそのとき。オオタカくんの持っている端末が振動した。

「反応来ました!」

 オオタカくんは祈るように端末を掲げて、お願いします、と唱えてから画面を開いた。

「シュロ・スズメ……! 惜しいんだけど……違うんだよなあ……」

 近づいたのか離れたのか。その結果にオオタカくんは落胆したようだが、ネガティブになるのはまだ早いはずだ。

「そんなに落ち込まないでください。まだ望みはあります。その人は男性ですか? 女性ですか?」

「男性です……」

「ひとまず会いに行って、話を聞きましょう!」

「でも……」

「わずかな可能性でも捨てちゃダメです。何もせず諦めるなんて、オオタカくんの意志は、そのていどのものなんですか?」

 私は項垂れるオオタカくんに奮起を促す。ここまで来ると、私もツバキ・スズメさんがどういう人なのか、会って確かめたい気持ちが強くなってきた。

「なになに。何が違うの?」

 ランが尋ねる。

「オオタカくんの運命の人。私たちが本当に会いたいのは、ツバキ・スズメさんなの」

「その人を探すよう言われたの?」

「そう。名前にスズメがつく人は『竹にスズメ』を体現するために竹刀を購入するんじゃないかと思って、ここに来たってわけ」

「ふうん……じゃあ、シュロ・スズメさんも竹刀を買いに来たってこと?」

「多分そうだと思うけど……」

 私はオオタカくんの方を見た。

「今、返事が来ました。やっぱり武道コーナーにいるそうです」

 私とランが話しているうちに、オオタカくんはいくつかやりとりを終えたようだ。

 私たちは武道コーナーに向かった。そして、そこで待っていたシュロ・スズメさんと対面を果たした。

「こんにちは、はじめまして」

「はじめまして、カキ・オオタカです。あなたも竹刀を買うんですか?」

「竹刀を? どうして? モールコンの邪魔にならないですか?」

 オオタカくんはしばし言葉を失った。今までの考え方を覆すような衝撃の発言だ。私たちは最初から見当違いをしていたのだろうか。

「じゃあ、どうしてここにいるんですか?」

「ああ、それは、僕のツリーネームがシュロって知らされたとき、思い出したんです。子供の頃、実家の庭にあったシュロの木の葉柄ようへいを刀のように振り回して遊んでいたことを。だから、つい懐かしくなって、本物の竹刀や木刀を見ておこうかなって」

「へえー、あれを刀として。うちの庭にも植わってますよ。シュロの木」

「そうなんですか? 固さも長さもちょうどよかったんですよね」

「ところで、ツバキ・スズメという女性とすれ違いませんでした? もしくは竹刀を担いだ人とか」

「んー……そういえば、二階で一人、竹刀を持った人を見かけたような。男性か女性かは分かりませんでしたけど」

「そうですか……ありがとうございます」

 オオタカくんがくるっと振り返った。

「モナミさん。二階ですよ。そこに彼女はいるのかも」

 オオタカくんの中で竹にスズメ説はまだ生きているらしい。次は二階か。

「お役に立てず、ごめんなさい」

 シュロさんが謝った。

「いえいえ、情報提供ありがとうございます。お互い頑張りましょう」

 私たちはスポーツ用品店をあとにした。ランはしばらくとどまって、もしツバキ・スズメさんが現れたら連絡すると言ってくれた。

 私とオオタカくんはスポーツ用品店の目の前のエスカレーターに乗り、二階へ移動する。

「いろんなスズメさんがいるんですね……」

「そうですね。でも、俺が探してるのはそんじょそこらのスズメじゃありません。めったに出会えない幻の鳥、ヒマラヤハジロユキスズメなのです」

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