4ー11
私たちは一階の一番西にあるスポーツ用品店を目指して移動を開始した。全体マップを見たところスポーツ用品店は方形フロアの面積の半分くらいを占めている。
移動の途中、オオタカくんの端末が反応した。三角形フロアのフードコートに差しかかったタイミングだった。
反応は二人分あった。ツバキ・スズメではない。どうやらすでに成立したカップルのようで、こちらに気づくと、手を振って自分たちの位置を知らせてくれた。私たちは手がかりになるような情報が聞けないかと期待して、二人に接触してみることにした。
食事中の二人と合流すると、四人が座れるような席に場所を変えた。私とオオタカくんは二人の向かい側に座った。
「はじめまして、キンモクセイ・カモです」
二人のうちの男性が自己紹介した。
「私はゲッケイジュ・ハクチョウといいます」
続いて女性。
「カキ・オオタカです。すいません、お邪魔でしたよね」
「いえ、どんな名前の人と会えるのか楽しみにしているので、むしろ大歓迎ですよ」
「お二人はもう付き合うことにしたんですか?」
オオタカくんがストレートに聞いた。
「はい。お互いゲームが趣味ということで、意気投合して。特にゴールドフラワーの作るゲームに目がないんですよ」
「あまりにも価値観が合うので、もう話が結婚まで進んじゃって」
二人は幸せそうに笑って話す。
「なるほど……うらやましいなあ」
「まさか、自分が誰かと付き合えるなんて思いませんでした。こんなに気が合う人と出会えて、神様ありがとう! じゃなくて、ゴールドフラワーありがとう! ですね」
キンモクセイさんがしみじみと言った。
「そこはこう言うべきでしょう。『わが伴侶を探す旅も、ようやくメドがついたようです』って」
「確かに! そうですね!」
三人は高らかな笑い声をあげた。
今、オオタカくんが言ったセリフは、ゲームアプリ「シューパク」に登場する女好きの王英が紆余曲折を経て扈三娘と結婚できた時に言うセリフだ。私もシューパクをやりこんでやっとそのセリフに行き着いた。
「ところで、聞いておきたいことがあるんですが……ツバキ・スズメって人を知ってますか?」
オオタカくんが真剣な眼差しで二人に聞いた。
「いやあ、出会ってないですね」
「私もです」
二人からは望んだ答えは返ってこなかった。
「そうですか……」
「めずらしいですね、比翼連理ネームをあらかじめ知っているなんて」
「ええ、まあ、いろいろあって」
オオタカくんは笑いながらごまかす。ジョー大師から特別扱いを受けていることは、言えないだろう。
二人との会話はそこそこにして、私たちは席を立った。二人と別れて、本来の目的地を目指して歩き出す。
「もうくっついた人がいるんですね」
「ええ。もしかしたらツバキ・スズメさんもすでに相手を見つけてデートしているのかも」
私はついオオタカくんが不安になるようなことを言ってしまった。
「ああ……いやだ。彼女が他の男といるところなんて想像もしたくない」
オオタカくんの歩く速度が速まった。




