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一階半月フロアの北側は様々な飲食店が並ぶレストラン街になっている。
宝珠フロアから移動してくる途中でオオタカくんの端末に反応があった。
「ウメ・ウグイス……今度は女性ですね」
「避けるんじゃなくて、一度話してみたらどうですか? もしかしたら、ツバキ・スズメさんと会っているかもしれませんし」
「そうですね……何か有益な情報が聞けるといいですけど」
オオタカくんは画面に表示された「いいね」を押した。
二人はいくつかメッセージをやりとりし、ある飲食店の前で待ち合わせすることになった。
やがて、そこに若い女性が現れた。
「こんにちは……あっ、あなたが、カキ・オオタカさんですか?」
「ええ。ウメ・ウグイスさんですよね? ウグイス色のダウンジャケットを着てるって……」
「はい、そうです! 柿色のセーター、とっても分かりやすいですね!」
ウメ・ウグイスさんはオオタカくんとさほど年は変わらないように見えた。
「なんか、同じような発想をしたんですね、俺たち……」
「そうですねえ、そこがまた、このモールコンの面白いところだと思います」
二人の相性はなかなか良好らしい。考え方が似ていて、早く仲良くなれそうだ。
「私、この比翼連理ネームめっちゃ気に入ってるんですよ。『梅にウグイス』って言葉あるじゃないですか」
「あー、はいはい。ありますね。あっ、なんかおしゃれですね」
「ふふふ」
「あっ、ちょっと待ってください……」
オオタカくんは額に手を当てて考える仕草をした。
「……そうか! そうだったのか!」
「急にどうしたんですか?」
ウメ・ウグイスさんがきょとんとした顔で尋ねた。オオタカくんは私の方を向いて言った。
「モナミさん、さっき見かけた竹刀を担いだ人、あれって『竹にスズメ』を表現してたんじゃないですか?」
「え? いやあ、どうでしょう……」
「絶対そうですよ、間違いない」
オオタカくんは疑問が解けてすっきりしたような表情になっている。
「竹にスズメ? その話、詳しく聞いてもいいですか?」
オオタカくんはウメ・ウグイスさんに、先程の出来事をかいつまんで話す。
「さっき、マツ・スズメって男性とすれ違ったんです。その人が竹刀を肩に担いでいて。よく考えないままスルーしちゃいましたけど」
「そんな人がいたんですか! ぜひ会ってみたいです!」
ウメ・ウグイスさんの目の色が変わった。
「宝珠フロアの化粧品売り場にいましたけど……」
「私、絶対その人と相性いいですよ! だって『松竹梅』そろうもん!」
ええ? どういう理屈?
ウメ・ウグイスさんは今にも駆け出しそうになる。私はあわてて彼女を引き止めた。
「すみません、ひとつ聞いておきたいことが。ツバキ・スズメという女性とすれ違いませんでしたか?」
「さあ……知りません」
「そうですか……」
「でもその人、スズメってつくのなら、竹刀を用意するんじゃないですか? 今の話を聞いたら、私だったらそうする。方形フロアにスポーツ用品店がありますよ」
私は理解が追いつかず混乱してしまう。でも、オオタカくんは納得したように頷いていた。
「じゃ、私はこれで。待ってて! マツさん!」
ウメ・ウグイスさんは行ってしまった。せっかく相性が良いと出たのに、オオタカくんにはもう見向きもしないで。
「なかなか、にぎやかな人でしたね」
「でも、興味深いことが聞けました。彼女の言うことにも一理がある」
「スポーツ用品店に行けば会えると思いますか?」
「行ってみましょう。行かなければ分かりませんよ」




