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私たちは大師と別れたあと、宝珠フロアを探索してみることにした。
宝珠フロアはナイオンが展開する総合スーパーとなっており、一階部分は食品と日用品、二階部分は衣料品を取り扱っている。
「こんなところにいるんですかねぇ……出会いの場として全然ロマンチックじゃないですよ」
食品売り場を歩いていて、タンニンくんがぼそっと呟いた。
「そう感じるのはタンニンくんだけじゃないはず。あっちの化粧品売り場に行ってみましょう」
「今の俺はオオタカです」
「あー……そうですね。以後気をつけます」
さすがに他の参加者の前で本名を呼ぶのはまずいか。
化粧品売り場まで移動したところ、オオタカくんの端末に反応があった。
「来たー! 比翼連理ネームは……マツ・スズメ。あー、惜しい! モナミさん、近くにそれっぽい人がいないですか?」
そう言われて私は周辺を見回した。
「……ん? この人、男性って書いてあるじゃないですか。なんで男とマッチングするんだよ! スルーだ、スルー」
オオタカくんは素早く画面の「反応を消す」をタップした。これはもし出会いを回避したいときのために備わっている機能だ。
「あ、あの人かな。きょろきょろしてる」
私はレジの近くで端末を片手に周りを見回す男性を発見した。オオタカくんの対応が早すぎたために、向こうは端末の反応には気づいたけれど、比翼連理ネームの表示は見逃したとみられる。
「なんか気まずいですね。マッチングする人の性別を選べたらいいのに」
そうか、オオタカくんみたいに異性の結婚相手を探す人にとってはその方が使い勝手がいいのか。貴重な意見をもらった気がする。
「あの人が肩に担いでるの、何ですか?」
マツ・スズメさんを遠目に見ながら、オオタカくんが聞いてきた。
「ああ、あれは竹刀袋じゃないかな。中に竹刀を入れるやつ」
「竹刀? 本当ですか?」
「ええ。少し前に剣道場に行ったから見覚えがある」
「なんで竹刀なんか……」
私もいぶかる。剣道の稽古を終えてからモールコンに参加しているのだろうか。
疑問は残ったままだが、私たちは宝珠フロアから移動することにした。




