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4-6

 待ちに待ったイベントの情報の告知解禁日。

 ゴールドフラワーとレイダンが力を合わせて練り上げたこの企画がどう受け止められるのか、世間の反応が楽しみだった。いったい参加希望者はどれくらい集まるだろうか。


 まずはレイダンの全会員に、マッチングアプリ「比翼連理」のことや、テストプレイを兼ねたモールコンの詳細を記したメールを送信した。少しでも興味を持たれるように、有名占い師のジョー大師の名前をできる限り文章に織り交ぜた。


 早速、メールを読んだ会員から反応があった。面白そう、といってレイダンまで話を聞きに足を運んでくれた人が何人かいた。

 一方で、冷ややかな反応を示す人もいた。どうやら、あまり真面目なイベントとは思われなかったようだ。ふざけているわけではないのだが、婚活を考えず、普段出会えない人と出会って刺激をもらうことを楽しみにしている人がいるのも、確かだった。一応それは「比翼連理」の開発意図から外れてはいない。


 では、レイダンの外での反応はどうだったか。ジョー大師もゴールドフラワーも積極的に広報活動を行い、それを目にした人からの問い合わせがレイダンに相次いだ。だが、このイベントに参加するためにわざわざ結婚相談所に入会する人は少なく、思ったより参加希望者は伸びなかった。新規会員の大量獲得を期待していた代表はがっくりと肩を落としていた。


 それでも、モールコンの質を落とすわけにはいかない。なかには、ジョー大師やゴールドフラワーの熱心なファンでいて、レイダンに新たに入会してくれた人もいる。私が担当することになったタンニンくんも、その一人だ。

「いやー、まさに自分のためにあるかのようなイベントですね!」

 タンニンくんは庭師の職についている男性、二十八歳。趣味は最近始めたバードウオッチング。新しもの好きの性格のようで、興味のある分野の最新情報には常に目を光らせているという。「比翼連理」も試さずにはいられなかったそうだ。うんうん、お目が高い!

 タンニンくんは今回の企画を相当気に入ってくれたらしく、入会時に必要なものをすべてそろえてレイダンに来てくれた。

「……はい。以上で、入会手続きは完了です。これからよろしくお願いします」

「ありがとうございます」

 タンニンくんは心からモールコンを楽しみにしている。しかしそれだけに、恐れていることがある。

「……ちなみに、確認しておきたいのですが、モールコンが終わった後も、会員を続ける気はありますか?」

 レイダンでは、新しく入会した会員がモールコン終了後、目的は果たしたとして退会しないように、どんな対策を講じるべきか話し合われているところだ。

「うーん、モールコンでいい人と出会えて、交際できれば……レイダンのサポートは欲しいですね。見つからなかった場合はどうしようかなあ。でも、結婚しなきゃいけないとは思ってるんですよ。両親がそろそろ身を固めろってうるさいんで」

「ご両親と同居されているんですか?」

「ええ。実家にいます」

「結婚後もご両親のいる実家に住み続けますか?」

「うーん、いずれ出て行かなきゃとは思ってるんですけど……まだ、やるべきことがあるんで」

「やるべきこと?」

「俺の実家にある庭、亡くなったじいちゃんが手入れしてたんですけど……俺は子供の頃、何も知らないで至る所をシャベルでほじくって遊んでたんです。今となっては申し訳ないことをしてたなーって。もう聞くことはできないですけど、どうしてこの木を植えたのか、この石や灯籠は何を表現してるのか、じいちゃんがこの庭を作るとき何を考えてたのか、知りたくて、庭師になった今も毎日庭に出て考えるんです」

「おじいさんを、理解するために……。素敵なことだと思います」

 私は感じ入った。おじいさんが遺した庭と向き合うことで、もういないおじいさんと対話することも可能なのだ。

「そんなわけで、今は実家を離れられないです」

「なるほど。タンニンくんのことが少しずつ分かってきました」

 私は、タンニンくんが婚活を始めるのなら、そばでサポートしたいと思った。モールコンで素敵な人が見つからなかったとしても、レイダンに残ってくれるといいけれど。なんとか彼をつなぎ止めておける妙策が浮かばないだろうか。


 最終的にモールコン参加者は男女合わせて三十名ほどになった。準備は万端、あとは当日を迎えるだけだ。

 前代未聞で唯一無二のイベントが、始まる。

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