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「ありがとうございます。では、その次のページをご覧ください」

 ここから、話は次の段階に進んだ。

「私たちは、このアプリを使った街コンを企画しています」

「なるほど、街コンですか……」

 街コンとは、男女の出会いを創出するために開催されるイベントのことを指し、商店街や遊園地を貸し切って行う大型のものもあれば、一つのカフェや居酒屋を貸し切って行う小規模のものもある。

 ゴールドフラワーが企画しているのは、それをショッピングモールで行うモールコンらしく、ナイオンで実施予定だという。ナイオンは市内にある大型商業施設で、私は以前ランと映画を観に行ったことがある。

「今回のテストプレイでは、参加者に『比翼連理』が入った端末を貸し出し、モール内を移動することで同じ参加者を探してもらいます。私たちはこのアプリが実際どう動いたのか、データを収集し検証に役立てたいと考えております」

「そのテストプレイの参加者に、うちの会員が欲しいというわけですね」

 ロゼの説明のあと、代表が資料を見ながら言った。

「そうです。このテストプレイにはちゃんと身分が証明された人を集める必要があります。現段階では、私たちではそれが難しいので」

 ロゼが淡々と答える。

「タッグを組むなら、結婚相談所はうってつけというわけですか……」

 代表はしばらく唸ったあとで、資料にはないことを質問した。

「ショッピングモールでやる理由は?」

「この時期ですし、屋内でやるのが最適かと」

 ロゼが答える。季節は冬のさなか。窓の外には雪がちらついている。

「ナイオンにはもう伝えてあるんですか?」

 私の質問に、ロゼは首を振った。

「いえ、何も。特に許可や協力を得る必要はないと判断したので」

 その答えを聞いて、私は疑問を口にした。

「人、集まるでしょうか。普通の街コンなら、飲食代が割引になったりしますけど、それもないとなると……」

 ロゼとパウダー社長は顔を見合わせた。

「そのあたりは大丈夫だと思いますよ。ジョー大師に占ってもらえると宣伝すれば」

 またジョー大師か。本当にこの人を信用してもいいのだろうか。

「案ずるでない。今回のこのアプリの開発にあたっては、ゴールドフラワーの面々、並々ならぬ気概をもって臨んでおる。拙僧もそれに応えるべく、不惜身命ふしゃくしんみょうの精神で監修に取り組んだゆえ、その熱意が伝われば、人などわんさか寄ってくるであろう」

 ジョー大師は自信に満ちた態度でそう言った。

「僕たちは彼の占いの効力を信じています」

「まぎれもなく、このアプリは私たちの自信作です」

 二人がそこまで言うのなら、私から言えることはもうない。

「以上で、説明を終了します。私たちがレイダンさんにお願いしたいのは、会員の提供、モールコンの当日のサポート。この二つです。どうでしょうか。この話、受けていただけますか?」

 ゴールドフラワーの二人が、代表の顔色をうかがう。

「そうですね……御社のこのアプリにかける熱い思い、お話をうかがってひしひしと感じました。このアプリは世に出すべきだと思います。そうなれば、きっとこの国の人々を幸せに導いてくれるでしょう。ジョー大師のネームバリューも魅力的ですね。大師、うちの集客に、あなたの名前を使っても?」

「拙僧は構わぬ」

 ジョー大師は頷いた。

「ということは……」

 ロゼの目が輝いた。

「ええ。是非協力させてください」

「ありがとうございます!」

 パウダー社長の喜びようは、まるで少年がはしゃぐようだった。しかし、彼らにとって、協力を得るという目標は達成されたが、ここがゴールではない。お互い本当に忙しくなるのは、これからだ。

 今日の打ち合わせを終えて、私と代表、そしてジョー大師は帰り支度を始めた。冬の日没は早く、外は暗くなってきている。

 五人で会議室を出て、エレベーターに乗り込んだ。社長とロゼは、私たち三人を玄関まで見送ってくれた。

「今日は本当にありがとうございました」

「いえ、社長やロゼさんのような人と仕事ができて嬉しいです」

 私がそう言うと、彼女は親しみやすい笑顔を見せた。

「ロゼでいいですよ。こちらこそ、有意義な時間をありがとうございます」

 ああ、なんだか仲良くなれそうだ。私のこのプロジェクトに対するモチベーションは高まっていった。


 帰りの車中。私の頭の中にはさまざまなことが浮かんでいた。会員への周知。当日の動きの確認。考えただけで目が回りそうだ。でも、進める。頑張れる。なぜなら、私たちは、幸せに向かっているのだから。

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