3-3 花のナナハチ組
「ランはどう思う?」
私は隣のランに意見を求めた。
「そうねえ……。私の知り合いにも、ナナハチ生まれの人は何人かいるけど、両親まで同じ年生まれなんてことはないし、兄弟の数も違うし、同じような人が育つなんて、ありえないのよ。それでも自分と似たタイプの人間がいるのは、やっぱりロベールが言うように、その人たちは成長する過程で、同じ流行を追いかけてたとか、共通の趣味に打ち込んでたとかなんじゃない?」
「なるほど、ランらしい意見だね」
ランの交友関係の広さを思えば、説得力のある意見だった。
「うーむ……」
ロベールが難しい顔で唸る。一昔前の流行や世間の関心を集めた事件などを思い返しているのか。検索すれば出てくるのに、ロベールは一向にそれをしようとしない。
「一体、何があったのかな……」
私が呟くと、ふいにロベールが顔を上げた。
「彼女たちが芸能人なら、その活動にヒントがないかな」
「そうか、確かに。彼女たちの主義や主張を知れば、つながりが見えてくるかも」
「じゃあ、ちょうど三人いることだし、手分けして調べよう」
そう言ってロベールはズボンのポケットからスマホを取り出した。なんだ、スマホあるじゃん。てっきり持っていないのかと思った。
私たちは誰が誰を担当するのかを決めて、調べ始めた。指先を駆使して情報を集めていく。
数分後。全員が画面から顔を上げたので、調査結果を報告しあった。
まずは、ランのジャンヌから。
「ジャンヌは、元プロ卓球選手。いくつもの大会で成績を残し、ある時からスポーツウェアのデザインも手掛けるように。大会に自身がデザインした奇抜なユニフォームで出場することで有名。衣装のテーマは、世界の国々。毎回ひとつの国を決めて、その国の文化や風土をイメージしたデザインを考えるって。インタビューで彼女はこう答えているわ。私がその国を取り上げることで、多様な文化に関心を持ってもらいたい。国際理解を促進する手助けになれば、って」
ロベールは感心を表すかのように頷いた。
「意外としっかりした考えを持ってるんだね。外国の文化、か……」
続いて、ロベールがルパンについての報告を行う。
「僕はさっきランが見せてくれたルパンのウェブサイトを調べたよ。このサイトは、テレビ局のアナウンサーを辞めたのを機に開設したみたいだ。彼女はすでに結婚していて、子供もいる。ブログには育児について書かれた記事もあるけど、目立つのは、性教育に関する情報発信だ。養護教諭の資格を持っているから、もしかしたら前々からこうした活動がやりたかったのかもしれない。アナウンサーになったのは、伝える力を磨くため、だったのかな」
最後は、私のトリュフだ。
「トリュフは、歌唱だけでなく自身で作詞作曲もこなし、セクシャリティを題材にした作品は今でこそ高い評価を得ているが、デビューしたての頃は全く売れなかったそう。無名だった彼女を一躍有名にしたのは二〇〇六年に放送されたドラマ『十四才のあなたへ』で、このドラマが高視聴率を記録して、主題歌に起用されたトリュフも一気に世に知られるようになったって」
「二〇〇六年って、ちょうどルポくんが十四歳の時じゃないか! どんなドラマなんだい?」
「十代で妊娠、出産した母親が、子供に自らの体験を語って聞かせる形で、正しい性知識を身につけることの大切さを説く、というような内容だったらしいよ」
「ここでも性教育か……」
「このドラマで有名になったからか、翌年トリュフはバンドを結成してる。バンド名は『陵辱と隠蔽』」
「それは……穏やかじゃないね」
「どういう思いで名付けたのか、気になるね」
「そうか……」
ロベールは天井を仰ぎ見た。




