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2-14 婿に来ないか

 デートを兼ねたグラウンドゴルフ大会は午前中で終了し、私とランはレイダンへ戻った。午後からはミサさんとの面談が予定されている。昼食を早めに済ませ、しばらく待っていると、ケンジさんとミサさん親子が現れた。二人を相談室に通し、向かいに座ったミサさんに尋ねる。

「さて。どうでしたか? 今日は」

「意外と楽しかった」

「ほんと? 最後は、歌うことになっちゃったけど……」

「別に辛くはなかった。人を喜ばすのは好きだし」

「それはよかった。どんなところが楽しかったですか?」

「えっと……。みんなが楽しそうだったから、私もね。最初は絶対つまらないだろうと思ってたんです。でも、楽しくしてくれることを期待するんじゃなくて、自分から楽しもうとする心が大事なのかなって、町民のみんなを見ていたらそう思いました」

「うん、そこに気づけただけでも、参加した甲斐はあったと思います。では、タカオさんの印象はどうでしたか?」

「どうと言われても……。近所の優しいお兄さんって感じ」

「一応、理想の条件で検索して出てきた人だけど……タカオさんと交際してみたいですか?」

「……分からない」

 ミサさんは首を振って答える。いい雰囲気に見えたのに、ためらう理由は何だろう。

「アイドルっていう色眼鏡があるのかな。私のことを知らない人とも会ってみたいです」

「なるほど。では、タカオさんはひとまず保留としましょう。別の人と会うことで、見えてくる良さもあるはずです」

「でも、検索結果は一人だけだったでしょ。条件を変えなきゃいけないってこと?」

「実は、ミサさんにお見合いの申し込みが来ています」

 ミサさんが最終的に結婚を決めるのかは見通せない。しかし、ミサさんは変わりつつあるという手応えは感じられた。私は、これは彼女のためになると信じて手探りで話を進めていく。

「こちらはランの担当しているコウスケさん。警察官をされている方です」

 パソコンの画面に表示されたプロフィールを確認してもらう。

「この人、私のこと知ってるかな」

「この画面を見ただけではなんとも言えませんが……。会ってみますか?」

 ミサさんは少し考え込んで、次に口を開くまでやや間が空いた。

「ちょっと、わがまま言っていいですか」

「なんでしょう」

「この人とも、お見合いは抜きにして、いきなりデートすることってできますか?」

 返答に窮する。タカオさんの場合、結婚相談所が関与しなくても、グラウンドゴルフ大会に参加することで本人に会うことができた。都合良く大会があったおかげで、お見合いをはさまないデートは実現したが、毎回そんなイベントがあるわけではない。

「お見合いするのはちょっと苦手な感じかな?」

「苦手というか、ただ会ってお茶するだけじゃ何も分からなくないですか? その人の人となりを知るには、お見合いをするよりも仕事している姿や第三者との関わり方を見るのがいいと思うんです」

「うーん……ちょっとランとも相談してみますね」

 私は相談室を出て、ランのもとへ向かった。事務室にいたランを呼び止め、事情を説明する。最初はコウスケさんの都合を聞くつもりだったのが、お見合いは不要なのかという話に発展した。

「そういえば、私が今まで見てきた限りでは、お見合いを終えて交際したいか尋ねても、即断する人は少なかったわ。お見合いすることが悪いわけじゃないけど、二人がお互いをより深く知れるやり方が他にあるのかも」

 レイダンの提供する婚活の過程がどの人にもあてはまるわけではない。ミサさんのケースからはレイダンの今後のサービス向上につながるヒントが得られそうだった。

「とりあえず、コウスケさんに聞いてみるね」

 選んだ相手が元アイドルという事実を伏せながら、ランに電話で事情を伝えてもらう。

 通話が終わり、私はランを伴って相談室のミサさんのもとに戻った。

「どうでした?」

 ミサさんが不安そうな顔で尋ねてくる。ランが説明する。

「ミサちゃんの希望を伝えたところ、コウスケさんは快く受け入れてくださいました。警察官の仕事を見せるのは無理だけど、ちょうど来週の土曜日、母校のB高校でOBとして部活の指導をするそうです。それを見てみないか、と」

「B高校って、私と同じ高校だ!」

「ええ。コウスケさんはミサちゃんの最終学歴を見て、お見合いを申し込むことを決めたと言っていました」

 コウスケさんはミサさんより三つ年上なので、在学期間はずれている。

「ちなみに、その部活というのは?」

 ケンジさんが尋ねた。

「剣道部です」

「剣道は私も中学の時やってました。一年で辞めちゃったけど」

「じゃあ、どんなものか全くイメージできないってことはなさそうですね」

 どんどん話がまとまっていく。ランも生き生きとしているように見えた。無理難題に対処することを、楽しんでいるふしがある。

「では、来週の土曜日の朝、B高校に集合ということでいいですか?」

「はい。二人とも立ち会ってくれるんですか?」

 私とランは顔を見合わせた。

「どうする、モナミ? 男性の場合、立ち会わないことも多いんだけど……」

「じゃあ、今回は私が行きます。あんまり大勢で押しかけるのも悪いし……」

「分かった。私の分までよろしくね」

 私が立ち会うことになって、ミサさんは心から安堵したような表情になる。信頼を寄せてくれているようで嬉しい。新しい人や環境に対面するのには緊張がつきまとうものだ。

 さて、次はどんな出会いが待っているか。

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