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2-6 婿に来ないか

 翌日、レイダンに出勤すると、私のデスクの上に一通の封筒が置いてあった。

「代表。これは?」

 私は自分の席でコーヒーを飲んでいる代表に尋ねた。

「ああ、本当は昨日渡すつもりだったんだけどね。あんまり早く帰るもんだから渡しそびれたんだよ」

「ああ……すみませんでした」

 昨日は映画を観るために早々に職場を後にした。やはりちょっと浮かれすぎていたかもしれない。周りが見えていなかった。

 しかし、誰からだろう。封筒を手に取り、裏返してみた。差出人は……。

「あっ」

 私はその名前を見たとたん、急いで封を開けた。


モナミ様へ

 このたびは、私たちの息子のノルブがたいへんお世話になり、心よりお礼申し上げます。あんなにかたくなに大学を辞めると言って聞かなかった息子が、ころっと態度を変えて再び大学へ通うようになったのは、ひとえにモナミさんが親身になって相談を受けてくれたおかげです。少し長い文章になりますが、どうかお許しください。

 息子は昔から人付き合いが苦手なところがあり、大学で心を開ける友人ができるかどうか心配しておりました。そんなとき、大学から息子が授業に顔を出していないと連絡がありました。学生支援センターというところで話し合いの場が設けられましたが、説得には応じてくれませんでした。とりあえず休学という形になり、下宿先を引き払ったのですが、帰ってきた息子は、家にひきこもりがちになりました。どんどん悪い方向へ流れていく気がしました。そこで私たちはいてもたってもいられず、ひきこもりの支援などを行っている、サポートステーションに相談に行きました。同じような悩みを持つ人たちと関わって、息子にも何かよい変化が起こればいいと思っておりましたが、ある日、めずらしく早起きをして、髪型も服も整えてふらっとどこかへ出掛けていくようになりました。そのときは、行き先は教えてくれませんでした。おそらくは、息子なりに現状をよくしようといろいろ試していたのだと思います。彼の考えを知った、今だから言えることですけどね。

 モナミさんのところを訪ねたのは、彼はけじめをつけるため、と言っていました。過去の清算、でしょうか。息子も私たちの知らないところで苦労していたのかもしれません。親として、不徳の致すところです。ご迷惑でなければよかったのですが。

 私たちはカウンセリングのプロではありません。今回のことで私たちのいたらなさを痛感しました。そして、私たちはもっと優しくなれるということに気づくことができました。

 それというのも、モナミさんが息子の思いを汲んでくださり、彼のけじめをつける旅に的確に助言をしてくださったおかげです。

 モナミさんの温かい言葉が、きっと息子を立ち直らせたのだと思います。本当に、ありがとうございました。


ノルブの父、母より


 私は、不思議な読後感を味わっていた。結婚の報告でも、ましてや子供を授かったという報告でもない。おそらく普通の結婚相談員ならもらわない手紙だろう。それでも胸の奥がぽかぽかと温かいのは、この国でも親が子を思いやる尊い愛情に触れられたからだと思う。この手紙からは、ノルブのご両親の人柄の良さが伝わってくる。一家が幸せに近づくための手助けができて何よりだ。

 この手紙は、これから先もずっと私の宝物だ。

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