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帰還

 エルシュたちの胸元から蒼く輝く光、それは草原の守霊獣がくれた結晶魔石だった。エルシュたちの光と共に、蒼い光も白髪の男へ流れ混んでいく。


「まさか、草原の守霊獣さまが……?」


『お前達に希望を託すと言うたであろう』


 どこからともなく、守霊獣の優しく暖かい声がする。その間にも閃光の攻撃は止むことはなく、サニャが張った四つ目の結界にもヒビが入りパリィンと割れる。残すはエルシュの防御魔法の結界のみだ。


 全員が目を合わせ頷くと、白髪の男へ視線を向け、一斉に掛声を合わせて叫ぶ。


「「「「「いっけぇぇぇ!!!!!!」」」」」


 全員から大きな光が白髪の男に流れ込むと、グニャグニャと歪んだ白髪の男の顔が嬉しそうに微笑み、何かを口にした。


 それは、声にならない声だった。


『サヨナラ』


 それを見たエルシュは息を飲む。


 閃光を放っていた結晶は音を立てて砕け散り、白髪の男がいた場所から大きな大きな光が放たれる。エルシュたちはあまりの眩しさに目を瞑り、そしてそのまま気を失った。




 エルシュたちの魔力と魂を受けながら、白髪の男は自分の形がどんどんと失われていく感覚を味わっていた。


『あーあ、これじゃ僕の負けだなぁ』


 人形ヒトカタとして造られてからそれなりに楽しんだと思う。楽しいという気持ちがそれで合っているのならば、だが。別にこの世がどうなろうが正直どうでもよかったのだから。


 声として人間として生まれたエルシュを羨ましいとさえ思った、そう、羨ましいという言葉がたぶんぴったりなんだと思う。仲間たちに見守られ、時に支えられて生きている。


『僕はひとりぼっちなのになぁ』


 グニャグニャと歪みまたサラサラと流れていきながらそう思う。やっと終わる。やっと消えられる。


『次にもし形を持って生まれることがあるのなら人間がいいな』


 次第に人形ヒトカタとしての意識も無くなっていき、沢山の粒子になった中でその一粒の光が一瞬だけ大きく光輝いた。





「……シュ、エルシュ」


 ゆさゆさと誰かに肩を揺られながら名前を呼ばれている。瞳をゆっくりと開けると、そこにはダンロットの顔があった。


 体を起こして辺りを見渡すと、サニャがラウルにしがみついて大泣きしそれをラウルが抱き締めながらよしよしとなだめ、宙に浮いていた特級魔導師や一級魔導師たちも地面に倒れているか起き上がって各自倒れている面々に呼び掛けている。倒れていたのはどうやら魔法省の敷地内のようだ。


「私たち、無事なの?」


 エルシュの問いかけにダンロットは微笑んで答える。


「あぁ、どうやら無事みたいだ」


 その答えを聞いた瞬間、エルシュはダンロットに抱きついた。


「えっ、ちょっ、あの、えっ」


 ダンロットが赤面しながら慌てると、近くにいたラウルがニヤニヤしながら言う。


「ちゃんと受け止めてやれよ」


 その言葉に、ダンロットは控えめにエルシュの背中に手を回す。そしてしっかりと抱き締めた。


「おかえり、エルシュ」


 ダンロットの言葉を噛み締めるように、抱きつく腕にギュッと力を込めてからエルシュは答える。


「ただいま、ダンロット」




 サニャがラウルにしがみついて大泣きしている少し横で、シュミナールは気を失っているニアを上半身だけ抱き抱え心配そうに見つめていた。


 ふと、ニアの瞼が震える。


「ニア」


 シュミナールが呼び掛けると、ニアの瞼がゆっくり開く。


「シュミ、ナール……だん……ちょう……?」


 ぼんやりとだが目は見えているようだ。ニアの返事に、シュミナールは思わずニアを抱き締め呟く。


「よかった……!!」


(え、え、え?団長?いったいどうしたんですか?え?この状況はいったい?)


 突然のことに、ニアはなんのことかわからず頬を赤らめて呆然とする。



 その横でラウルがひゅー!と口笛を吹いた。


「お熱いことで」


 ラウルのからかう声が聞こえたか聞こえたかはシュミナールしかわからないが、それでもそんなことはおかまいなくシュミナールはニアを抱き締めたままだった。


 そしてその様子を、エルシュとダンロットは優しく見守っていた。





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