魔力と魂の使い道
ダンロットたちから白髪の男へ流れていく光に、エルシュは驚いて叫ぶ。
「どうしてみんながそんなこと!」
エルシュが皆の顔を見つめると、サニャが意識を集中させながら答える。
「古代語の意味はわかりませんが、先輩が自分の魔力と魂を使って白髪の男を消そうとしているのは知っています」
その言葉と共に、ひとつ目の防御結界がパリィンと割れた。
*
ベルシエでジャノスと話をした夜。サニャは寝付けず、少し散歩でもしようと外へ出かけるため廊下を歩いていた。するとジャノスの部屋からエルシュの声がして、部屋の扉はうっすらとだが開いていて光が漏れ出ている。
サニャは悪いと思いながらも気になって聞き耳を立てていた。すると、エルシュがとある可能性についてジャノスと話している所をつい聞いてしまうのだ。
「人形を元に戻す、消す場合にお師さまは魔導師たちの魔力と魂を使ったと聞きました。それは、それだけの魔力量と魂が必要ということでしょうか」
「そうだ、かなりの魔力量と魂を必要とする」
「だとすれば、声である私の魔力と魂であればそれに匹敵するのではありませんか」
エルシュの言葉に、ジャノスは目を見張った。
「それは……声であるお前であればそれは可能かもしれないが……そんなことをすればお前は奴と同様この世から消えることになるのだぞ」
「それはわかっています。でもこの力と魂があれば他の人たちを犠牲にする必要はありません。それに、その選択も声として生まれた私の命の使い道かと思って」
なんてことなくさらっと言ってのけるエルシュを見て、ジャノスは呆然とするがすぐに真面目な顔になる。
「お前はそれでいいのか。ダンロットたちが悲しむのではないか」
ジャノスの問いにエルシュは一瞬だけ迷った顔を見せる、が、すぐに笑顔になった。
「いいんです、皆が無事にこれからも笑顔で生きていけるならそれで。それにもし成功すれば声である私の存在はたぶん皆の記憶からは消えるはずですから」
エルシュの答えにジャノスは絶句し、ため息をつく。
「そこまで……そうか」
「お師さまの望みを叶えられず申し訳ありません」
「いいんだ、私はただ私の思う通りのことをした。お前はお前の人生の中で決めた道を進むがいい。後悔の無いようにな」
その会話をドアの陰から聞いていたサニャは思わず悲鳴を上げそうになるのをこらえ、両手を口の前に置いて息を止める。両目にはいっぱいの涙が浮かんでいた。
(うそ、そんな、それってつまり先輩がひとり犠牲になるってこと?そしたら私たちの中から先輩との思い出は全部無くなってしまうの?先輩が、消えてしまう?そんな、そんな……!そんなの絶対にダメ!)
サニャは慌ててその場を後にしてダンロットたちの部屋へいく。そして聞いた内容を全て話したのだった。
*
「先輩が自分の魔力と魂を使って白髪の男を消そうとしてると知った時、絶対にそんなの嫌だと思いました!だから皆で話し合って、前に先輩のお師匠さまがデーゼを消した時に話していた内容を思い出してピンときたんです」
サニャが話す間に、結晶からの閃光を受けていた二つ目の防御結界がパリィン!と割れる。
「エルシュが詠唱している間に俺たちが白髪の男と魔力的な繋がりを持てば、そこから俺たちの魔力と魂も流れていくんじゃないかって」
ダンロットが言うと、ラウルも続く。
「お前にばっかりいい顔させたくないからな」
「なんのために魔力を取り込んだと思っている」
シュミナールが言うのと同時に、三つ目の防御結界も割れた。
「絶対に一人で死なせたりなんかしない。俺たちの記憶から消えるなんて勝手なことさせない。絶対に皆で生き残るんだ」
ダンロットの言葉にエルシュの両目から涙がこぼれ、エルシュが纏う黄金の光が強くなる。それと同時に、エルシュたちの胸元が蒼く輝き始めた。




