偽りの再会
オーロラ色に輝く鉱石に、エルシュたちも気づく。
「とても綺麗……だけど、これは一体何なのかしら」
そう言ってエルシュの指先が鉱石に触れた瞬間、鉱石にヒビが入る。それと共鳴するように魔法省に張られていた結界にもヒビが入り、鉱石が割れて粉々になると同時に結界も粉々に割れて消え去った。
「えっ……」
「あっけなく壊れて消えちまったけど、壊していいもんだったのか?」
突然のことに驚くエルシュに、ラウルがからかうように言うと、エルシュは慌てたように壊したんじゃなくて勝手に壊れたんです!と少しムキになって反論する。
元々ラウルには時々人間らしさを見せていたエルシュだったが、最近はより感情を大きくあらわすようになり、それがラウルは嬉しくてエルシュのことをついからかってしまうのだ。
(出会ったばかりの頃は不愛想というか表情が全くなくて何にも興味がないような顔してたのに、今じゃこんなに表情豊かになって感情もちゃんと出すようになってくれたんだもんな)
「魔法省に張られていた結界が壊れた、結果としてよかったはずだ。恐らく結界を破るためのものだったのだろう」
シュミナールが静かにそう言うとエルシュはホッとしたような顔になり、ラウルはつまんねーのとぼやく。
「これについてジャノスの書記には何か記されていなかったのか」
シュミナールが聞くと、エルシュは首を横に振る。
「これについては全く何も書かれていませんでした」
「そうか。だとすればあの白髪の男の仕業の可能性もある」
シュミナールの言葉に一同は身を引き締める。
「ここから先はまた何が起こるかわからない。ニアや魔法省に残っていた魔導師達の身も心配だ。急ぐぞ」
結界が無くなった魔法省に入ると、誰もいないようでただただ静かだ。
「誰もいないみたいですね」
ダンロットの声が響く。
「変な気配もありませんね」
サニャが感知魔法で探りをいれるが特に何もないようだ。
「逆に怪しさ満載ね」
エルシュが嫌そうな顔をして言うと、ラウルが何かに気づいた。
「おい、あれ人影じゃねーか」
視線の先の曲がり角の床に影が見える。ラウルの言葉に反応するように人影は曲がり角に消えていった。
「追いかけるぞ」
走りながら追いかけ曲がり角を曲がると、少し先に走る人の背中が見える。
(……おいおい嘘だろ、あの背中ってまさか)
その背中を見た瞬間にラウルが思わず息を飲んだ。背中を追いかけて行くと、とある一室に入っていった。そこは室内演習場。ガランとだだっ広い広場の真ん中に、その人はいた。
「おい、あんた姉貴だろ」
追いかけていた背中にラウルが声をかける。その言葉にエルシュたちは驚き、一斉にラウルを見た。呼ばれた背中はゆっくりと振り返り、その顔を見たラウルは目を見張る。
「久しぶりね、ラウル」
ニッコリと嬉しそうに頬笑むその人は、ラウルの姉ケイトその人だった。
「どうして……デーゼを消すために魂と魔力を犠牲にして死んだんじゃなかったのか」
ラウルが信じられないものを見るような目でケイトを見つめると、ケイトは優しく頬笑む。
「ずっと騙していてごめんなさい。でも、これからは一緒にいられるのよ。また昔みたいに家族皆で仲良く暮らしましょう」
ケイトの言葉にサニャは驚き、両手で口を覆いラウルを見る。
「よかったですね、ラウルさん!お姉さま、生きてらっしゃったんですね」
サニャの喜ぶ様とは正反対に、エルシュはケイトへ冷ややかな視線を送っている。そしてそれはラウルもまた同じだった。
「冗談きついぜ、全く」
ラウルはため息をついて吐き捨てる。顔をあげるとその顔は怒りで煮えたぎっていた。
「俺が十三歳の頃に別れた時となんで変わらないんだよ。遥か昔の事なのに、なんでちっとも老けてないんだ」
「魔力の強い魔導師は老けにくいってラウルも知ってるでしょう。それにどうしてそんなに怒っているの?」
ラウルの言葉にケイトは悲しそうな声で反論する。
「老けにくいったって全く老けずに同じままなのはおかしいだろうが。いい加減にしろよ。お前なんなんだよ」
ラウルがドスの効いた声で訪ねる。すると、ケイトは先ほどまでの優しい笑顔ではなく、口の端を歪ませて憎らしいほど嫌な微笑みをしていた。




