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炎・氷・風との戦い

 地面から次々に飛び出す岩をエルシュたちは防御魔法で防ぎ、もしくは身を翻して避けていた。


「えいっ!」


 サニャが両手を広げ無詠唱で魔法を繰り出すと、沢山の岩は全て氷と化して地面に落下する。


「でかしたわよ、サニャ!」


 エルシュに誉められえへへ、と嬉しそうにサニャは照れた。すると、落下した氷が突如ジュウゥ……と蒸発し始め、炎がボッ!とあちこちに灯り始める。その炎は一ヶ所に集まり大きな大きな人のような形になった。


「おいおい、まだ何かあるのかよ」


 ラウルが苦虫を潰したような顔で言う。炎の巨人は手を上空に向けた、次の瞬間その手から次々に炎の矢が飛び出し降り注いでくる。


 咄嗟にサニャが防御魔法で皆を守る。ラウルは魔法の鎖で炎の巨人の腕を縛ろうと試みるが、炎を貫通してしまい縛ることができない。


「ちっ」


 舌打ちするラウルの横から、シュミナールが剣を構えて一歩前に出る。虚ろな瞳には闘志が宿り、構えた剣には闘気が集まっている。その闘気の風圧によろめかないようこらえつつ、エルシュたちはシュミナールを見た。


「ハアアァァァッ!!!!」


 シュミナールは低く響く声と共に、剣を大きく振りかぶった。次の瞬間、剣からものすごい爆風が発生し、炎の巨人に直撃する。すると炎は瞬く間に吹き飛ばされ、跡形も無くなっていた。


「さっすが団長!」


 エルシュは両手を打って喜ぶが、シュミナールはまだ気を緩めない。



 吹き飛ばされ何もなくなったエルシュ達の目の前にぽつん、と雨のような水滴がひとつぶ落ちた。すると、その水滴が渦を巻きどんどん大きくなっていく。さらにその渦から氷の弾丸が四方八方に飛び出てきた。


「今度は氷か!」


 ダンロットはものすごい速さで剣で氷を次々と弾いていく。その横でエルシュが片手を向けて魔法を発動すると、ダンロットの目の前に岩壁が現れた。

 

 さらに水の渦を取り囲むように岩壁が発生する。そしてその土壁はどんどん水の渦へと近づき、最後には渦を囲み潰した。



「さて、この流れでいくと恐らく最後は風か」


 ラウルがぼやくように呟くと、岩壁にヒビが入り弾けた。岩壁があった場所にはつむじ風が巻き起こり、それはどんどん大きくなってあっという間に竜巻になっていた。


「これはちょっとまずいんじゃないかしら」


 風圧に耐えかねてエルシュが片眼を瞑りながら竜巻を見る。竜巻は、みるみるうちに大きさを増していく。もはや背後にある魔法省の建物すら飲み込みそうな勢いだ。


『炎よ、その熱さの誇りと神髄を見せよ。大いなる力を今ここに宿せ』


 ラウルが両手を竜巻に向けて詠唱を始める。竜巻の根元には赤く輝く魔法陣が現れた。


『イグエニスクシス!』


 ラウルの詠唱と共に魔方陣が煌々と輝き、竜巻の内側が燃えるように赤く光る。その瞬間、内側から大きな爆発が起こった。


 ゴオオオオン!と爆音と共に竜巻が吹き飛び、辺り一面には砂埃が舞う。風が止み砂埃が落ち着くと、エルシュたちがなんてことない顔で立っていた。


「ラウルさんすごいです!特訓の時に詠唱のやり方を教わってはいましたけど、ラウルさんの詠唱が聞けるなんて!」


 サニャは目を輝かせながらラウルに言う。


「ラウル先輩もなかなか良い声してるのよね。詠唱向きというかなんというか」


 エルシュもやれやれという顔をしつつ、ラウルを誉める。


「お、なんだなんだ、俺のこの美声に惚れたか?」

「うっわ、バカ言わないでくださいよ。まぁサニャはどうか知りませんけど」


 からかうラウルにエルシュが言うと、サニャは一瞬ぽかんとするが、すぐに顔を真っ赤にする。そんなエルシュたちをダンロットとシュミナールは微笑ましく眺めていたが、ふと何かに気づく。


 竜巻があった場所にキラキラと粒子のようなものが集まっていた。また戦闘かと咄嗟に剣を構えるが、そのキラキラしたものはどんどん大きくなり、最後にはオーロラ色に輝く結晶の鉱石になった。




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