岩との戦い
ベルシアからエルシュたちは転移魔法ですぐさま帝都へ向かうことにした。行きは複数人の騎士団を引き連れての旅だったため途中馬で移動する手段をとったが、エルシュたちだけであれば問題なくベルシアから帝都までひとっ飛びできる。
「お師さまはここで養生していてください」
ジャノスが過去に書いていた書について色々と確認したエルシュは、まだ身体が全回復ではないジャノスをベルシアに置いていくことにした。
たとえ魔力はなくなっていても筆頭魔導士であったジャノスは最低限の武術は習得しているため、逃げ出さないよう監視の意味もこめて、ジャノスの側には騎士団員を数名残していくことになった。
街の民には洞窟から漏れでた魔力の原因がジャノスだということは伏せている。もしもわかってしまえば何を言われるかわからないからだ。
「これが今生の別れになるかどうかはわからないが、どうか気をつけて。武運を祈ろう」
エルシュの顔をじっと見つめ、ジャノスは静かにそう告げた。
*
「何よこれ……!」
転移魔法で帝都へ着いたエルシュたちは目の前の光景に驚いた。帝都の中心街ではいるはずのない獣魔と戦う騎士団たちがいたのだ。
(これもきっとあの白髪の男の仕業よね、早くなんとかしないと大変なことになってしまう)
エルシュは拳を握り締めて騎士団のもとへ走りより援護する。
「団長!無事のご帰還何よりです!」
シュミナールに気づいた騎士団員が獣魔に剣を向けつつ笑顔で出迎えた。
「大丈夫か?一体何があった?」
一振りで目の前の獣魔を倒したシュミナールは、団員に聞く。
「わからないんです。団員の一人が突然暴れだして、それを止めに入ったニア副団長がいたことまでは覚えているのですが、そこから皆気を失ってしまって……気づいた時にはこの有様でした」
ニアの名前が出た途端にシュミナールとラウルは目を合わせた。
「ニアはどうした」
シュミナールの問いに団員は申し訳なさそうに首を振る。
「どこにも見当たらないのです。魔法省に応援要請を出そうとしたのですがなぜか結界が張られていて入れませんし……」
エルシュは眉を寄せ、サニャはローブの裾をギュッと握った。
(やはりニアの魔力が狙われたのだろうか、ニアは一体どこにいったんだ。まさか連れ去らわれたのか……?)
不安な心を隠しながら、シュミナ―ルは騎士団長としての顔を崩さず団員へ聞く。
「城内は?皇帝はどうなされた?!」
「皇帝は側近たちと守護の結界場にて無事です!」
守護の結界場は城内にある一番守りの固い場所で、帝都でもしものことがあった場合に皇帝や皇族達が避難する場所だ。団員の言葉にシュミナールは安堵する。
「とにかくここは我々に任せて、副団長を探してください!お願いします!」
団員の一人がそう声をあげると、獣魔から民を守っていた騎士団員たちが次々に頷く。
「すまない!任せたぞ!」
エルシュたちは中心街を抜け魔法省の目の前に着いたが、騎士団員の言葉通りに結界が張られていた。
「こんなものさっさと破ってやるわよ」
エルシュが吐き捨て結界を破ろうとすると、突如地面が揺れ始め地中から何かが出てきた。その姿はゴツゴツとした岩で出来ており、大きさは遥か頭上を見上げるほどだ。
「ゴーレムか!?なんなんだよこいつは!」
ラウルが舌打ち混じりに言うと、岩の顔らしき部分に目のような赤い光が二つ入り、突然ラウルへ拳の握られた岩の腕を伸ばす。
ドオォォンと音がしてラウルのいた場所の地面がくり抜かれたようにへこんだ。
「ラウルさん!」
サニャが驚いて名前を呼ぶと、砂埃の影から防御魔法で覆われたラウルが、口の端を上げながら立っていた。
「こんなこと位で俺がやられるわけないっつーの」
ラウルが手を上げて岩の腕に爆発魔法を繰り出すと、拳から腕までが一直線に爆破された。
爆破されたことによって体勢が崩れ、その隙を見逃さなかったシュミナールとダンロットが交錯して切り込む。岩の体に二本の線が入ると、轟音を響かせ一気に崩れ落ちた。
「すごいです!」
サニャが目を輝かせ喜ぶと、シュミナールが何かに気づいて渋い顔をしながら呟く。
「まだだ」
その瞬間、地面の至る所から岩の弾丸が飛び出してきた。




