本当の強さ
ジャノスは目線をゆっくりとシュミナール、そしてラウルに向ける。
「君たちのように強く、そして才能もある人間だからこそ成り立つことだ。そうでない人間の方が多いのだ。そしてそういう人間の多くが諦めや絶望、嫉妬などにとらわれ生きていく。その度に争いは生まれそれは消えることがない。そしてそれを利用して私腹を肥やし搾取する人間もいる。そんな世の中が果たして幸せだと言えるのだろうか」
「だからこの世界を終わらせようと思ったのですか。人間に見切りをつけ、自分の使命だからとかこつけて」
「かこつけているわけではない」
静かに言うダンロットの言葉に、ジャノスは一瞬声を荒げる。
「人間は過ちを何度でも繰り返す。自らの発展のために我が物顔で環境を破壊し他の生物のことなど気にしない。同じ人間同士でさえ争い侵略し破壊し合うのだ。進化しているようで自ら破滅していくのだよ。それをリセットするのが私の役目だ」
ジャノスは静かに語る。静かだが、そこには揺るがない強い思いが感じ取れた。
「強い人たちが皆最初から強いわけではないです」
隣のベッドで寝ていたダンロットがゆっくり起き上がった。
「ダンロット、起き上がって大丈夫なの?」
エルシュが心配そうに聞くと、ダンロットは頬笑んで答える。
「サニャちゃんの治癒魔法は完璧だったし、休息もさせてもらえたからもう大丈夫だよ」
ダンロットの言葉に、サニャはホッとして胸をなでおろした。
「確かに元々強い人だって才能がある人だっているでしょう。でも強い人だって弱くなってしまう時もある。才能がある人だって才能が埋もれてしまうことだってある。それに元々強くない人だって、その状況によっては強くならざるを得ないことだってある。一人一人に違う生い立ちがあるのだから、一概にどうと言えることじゃないと思います。そしてきっとそれのどれが正しいとも間違いとも言えることじゃない」
ダンロットはゆっくりとそう語るとジャノスの瞳をしっかり見つめる。
「ただ、俺の気持ちを言うとしたら、シュミナール団長やラウルさんをただ強く才能があるからだということだけで終わらせてほしくないです。団長たちは団長たちで色んなことに向き合って一生懸命生きているんですから」
ダンロットの言葉に、シュミナールとラウルは目を合わせる。
「あなたがその使命を果たしたいと思う気持ちはわかりました。それにもちろん納得はいきません、ですがそれがあなたの選んだ道だというのであればそれがそうだということなんでしょう」
ラウルは意外そうな表情でダンロットを見ると、エルシュはそれを見て少し微笑んだ。
「あなたがあなたの選んだ道を歩んだように、俺たちは自分が選んだ道を歩みます。人間が過ちを繰り返す生き物だとしても、俺たちは皆がそれぞれに一生懸命生きているこの世界が好きですし、皆で生きていきたいんです。そのために帝都へ向かいます」
その言葉に一同はそれぞれに顔を見合せ頷き合う。
「そして、エルシュがどうしたいかはエルシュが決めていいんだよ。俺達やお師匠さまに気を使うことなんてない。エルシュ自身がどうしたいかだ」
(俺はエルシュがどんな決断をしたとしても、エルシュと一緒に歩いていくんだ。それが団長たちと違う道になったとしても、団長たちに強制しない。たとえ俺ひとりだけだったとしても、俺はエルシュの味方でエルシュのそばを離れない)
ダンロットが強い意思を持ってエルシュを見ながら微笑むと、エルシュはダンロットを見つめ返し静かに微笑んだ。




