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償い

 白髪の男の手が引き抜かれると、ジャノスはその場に崩れ落ちた。白髪の男の手には虹色に輝く鉱石がある。


「ちょっと荒いやり方だけど、この方が手っ取り早く魔力を引き抜けるからね。あぁ、命は取らないでおいてあげるよ。時間の問題だろうけど」

「てめぇどういうつもりだ!ジャノスはてめぇを生み出した張本人だろ!それに使命がどうたらって言って……」


 ラウルが言うと、遮るように白髪の男が返事をする。


「使命は魔力を人形ヒトカタの器に明け渡すまでが使命なんだよ。ジャノスだってこうなることはわかっているはずだ」


 にっこりしながら白髪の男がジャノスを見下ろすと、ジャノスは横たわりながら血を流し消え入りそうな呼吸を繰り返している。


「そんな事をしていたら過去にもサンクレフト家の魔力や血筋は途絶えていた可能性だってあるだろう」


 シュミナールが怒りをはらんだ声で言う。


「そうだね、でもそもそも世界をリセットするための人形ヒトカタの器なんだよ?使命が果たされた時点でその当時の世界がこの世にあると思う?歴代のサンクレフト家は皆同じサンクレフト家だとは限らないでしょう」


 くすくすと楽しげに笑う白髪の男の言葉に、その場の誰もが信じられないという顔をしていた。


「さて、僕はこれを使って最後の仕上げをしなくちゃならない。帝都で待ってるよ、エルシュ。僕には君が必要なんだ」


 エルシュに微笑みを向けると白髪の男の足元に魔方陣が浮かび上がり、男はその中に消えていった。


「おい!待てよ!!」


 ラウルが叫ぶが魔方陣はあっさりと消える。


「お師さま!」


 エルシュが慌ててジャノスの元に駆け寄る。治癒魔法を施そうとするが、ジャノスは残りわずかの力で物理的に抵抗し、治癒魔法を受けたがらない。


「これが……私の定めなのだ……から……このまま……死なせてくれ」


 消え入りそうな声でジャノスは言うと、懐から巾着袋を取り出す。その巾着袋は布地が上質で美しい模様が施されている。


「これを……シュミナール……君に……」


 渡されたシュミナールが巾着袋の中身を取り出すと、中から翠玉色に輝く鉱石が出てきた。


「これは、まさか!」


「君の……魔力の結晶だ……これだけは……返すべきだと思って……デーゼを消した時に結晶化して……おいたんだ……」


 ゼーゼーと鈍い呼吸音をさせながらジャノスは言う。


「奴、には……絶対に、奪われまいと……魔法で編んだ布地、で隠し持っていた……ようやく、返せる……」


 言い終わると微笑み、手がパタリと地面に落ちる。


「お師さま!」


 エルシュが呼び掛けるが答えはない。命の炎が消えかかっている状態だ。


「ダメです!!」


 突然サニャがジャノスの胸元に手を当てて蘇生魔法を施し始める。


「何もかも勝手すぎます!しかも勝手に死のうとするなんて絶対にダメです!死んで償えるなんて思うなよ!です!生きてちゃんと先輩達に説明してくれなきゃダメです!」


 サニャの言葉が果たして聞こえたのかどうか、ジャノスの眉が一瞬ピクリ、と動いたように見えた。




 サニャが蘇生魔法を施している間、シュミナールは手渡された魔力の結晶である鉱石を呆然と見つめていた。


「本当に団長さまの魔力なのかこれ」


 ラウルが顰め面で聞く。


「確かに俺の魔力だ、それは自分でわかる。だが、今さらこれを渡されてもな……」


 キラキラと美しく輝く鉱石が、シュミナールの虚ろな瞳に綺麗に映っていた。



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