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覚醒

 ここはどこだろう。真っ暗だ。どこまでも、真っ暗。何をしていたんだっけ。ぼんやりとしか思い出せない。


 お師さまと再会して、白い髪の男に色々と言わていた気がする。全部お前のせいだと言っていた。


 私のせい。全部私のせい。お師さまがあんな風になってしまったのも、ラウル先輩のお姉さんが犠牲になってしまったのも、シュミナール団長が死にそうになりなりながら魔力を奪われてしまったのも、全部私のせいなのか。


 だったら私なんていない方がよかったじゃないか。なんで私はいるんだろう。なんで生まれてきてしまったのだろう。

 もう嫌だ。何もかもが嫌。何もしたくない、何も考えたくない、どこにもいきたくない。


 でもここは真っ暗で何も見えない。そうか、それでいいのか。真っ暗だったら何も起こらない。誰も傷つかない。


『エルシュ』


 目の前に手が差し出される。見上げるとそこには微笑んでいるダンロットがいる。そっか、ダンロットだ。いつでもどんなときでも、ダンロットは手を差しのべて側にいてくれた。


 その手を取ろうとすると、目の前のダンロットが崩れこむ。



「……せん……ぱい!先輩!……さんが!……ダンロットさんが!」


 遠くで、サニャの声がする。


 パァン!と大きな音がして、目の前が突然明るくなった。



(あ、れ……?私、何をしてたんだっけ?ダンロットの手をとろうとして、そして……。なんだろう、サニャちゃんの声が聞こえるきがするけど)


「先輩!いい加減に目を覚ましてください!!ダンロットさんが死にそうなんです!!!あの敵を倒せるのは先輩しかいないじゃないですか!!!いつまでそうやって呆然としてるんです!!早く戻ってきてください!!お願いですから!!!!」


 目の前にぼんやりと人影が現れてくる。


「お願い……ですから……」


 人影がはっきりとして、そこには涙をボロボロと流すサニャがいた。エルシュがハッ!とした顔でサニャを見る。エルシュの焦点が合っているので、サニャとしっかり目が合った。


「サニャ……?泣いているの?」


 エルシュが心配そうに言うと、サニャはわっ!と大泣きし始めた。


「先輩!先輩!ダンロットさんが!大変なんです!!」


 サニャが言う方向を見ると、ダンロットが血を流して倒れている。


(え……どういうこと、待って待って待って待って)


 心臓がドクドクと脈打ち、冷や汗が流れるのがわかる。目の前の光景に、お願いだから嘘だと言ってくれとエルシュは祈った。よろよろと立ち上がったエルシュの足どりは、どんどんしっかりとしてダンロットへ向かっていく。


「ダンロット!!!」


 エルシュが駆け寄るとダンロットは目をうっすらと開けて頬笑んだ。


「……そんな、心配そうな、顔をしないで……大丈夫……だ……から」

「無理してしゃべんな!」


 弱々しくしゃべるダンロットにラウルが治癒魔法をかけながら叫ぶ。


「変わります!!!」


 サニャがラウルに言ってダンロットへ治癒魔法を施す。エルシュが戻ったおかげなのか、泣いたままだがしっかりした顔をしていた。


 ラウルが治癒魔法を施していたこととサニャが魔法に集中できるようになったことで、ダンロットの傷はみるみる塞がれていく。



「エルシュ!こいつをなんとかしてくれ!すぐに再生してしまう!」


 伸びてくる腕のようなものを、シュミナールが次々と切り落としている。その様子に、エルシュは顔をしかめた。幼い頃に見覚えのある顔が所々についていることに気づき、その後ろにいる白髪の男を睨んだ。


「魔導師たちの体と魂を使ったのね」

「了承は得てるんだよ。結果こうなるとは思ってないだろうけど」


 エルシュはジャノスを見ると、ジャノスも視線に気づいてエルシュを見る。その目には微かに動揺が現れているが、隠すかのようにポーカーフェイスを崩さない。


「この結果も私のせいだって言いたいの」

「そうだね、君がいるせいだよ」


 

 エルシュが白髪の男に尋ねると、白髪の男は微笑みながら答える。その言葉に、エルシュは拳をきつく握り締め目を瞑り、すぐに開いた。


「私のせいだっていうなら、その落し前は私がちゃんとつけなきゃいけないわよね」


 しっかりした顔つきで、エルシュは得体の知れないものを見据えた。




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