因果
ジャノスの言葉にエルシュたちは複雑そうな顔をする。
「そういう家系に生まれた……?」
「人の世は必ず繁栄と破滅を繰り返すものだ。繁栄すればするほど人に都合の良いようにのみ発展し、その他の生き物や環境はどんどん衰退し荒廃していく。ある一定のレベルまで達すると、リセットするためだけに必要とされる者が生まれ、その力のために人形は生み出される。それがこの世の成り立ちだ」
ジャノスの説明にエルシュたちはついていけない。
「そのこの世の成り立ちを何千年何百年とはるか昔から代々見守り、時に遂行してきたのが我がサンクレフト家の使命だ」
ジャノスは淡々と言い放つ。
「今までもこんな風に人形が生み出されてきたとでも言うのですか?そんなことも、サンクレフト家がそんな使命を背負う家だなんてことも聞いたことがない」
ダンロットが戸惑いながら言う。
「この世の成り立ちも一族の使命も秘密裏にされてきたことだ。そんなことが公になれば混乱を招くだろうし、一族の血はきっと受け継がれることなく消されただろう」
「それとエルシュが一体なんの関係があるっていうんだよ」
ラウルが噛みつくように言うと、ジャノスはラウルを見て目を細める。
「ラウルか、元気そうだな。君のお姉さんのことは本当に申し訳ないと思っている」
ジャノスの言葉にラウルはカッとなって怒鳴った。
「今さらなんなんだよ!今はそんなこと聞いてねぇだろ!」
「君のお姉さんも関係しているからだよ」
白髪の男が微笑んで言う。
「は?」
「ケイトは優秀な魔導師だった。だからこそこの世の成り立ちも私の使命についても理解を示し、協力してくれた」
ジャノスはほんの少し苦しそうに眉間に皺を寄せている。
「彼女はデーゼの暴走を止める際に魂と魔力を差し出してくれたんだ」
「一体どういうことだ」
シュミナールが内臓を響かせるかのような低い声で聞く。一見いつものように冷静そうに見えるその顔だが瞳には燃えるような怒りの炎が宿っている。
「シュミナール。君にも本当にすまないことをしたと思っている。デーゼが暴走してしまったばかりにあんなことになってしまうとは」
ジャノスの言葉にラウルもシュミナールも怒りを隠しきれない。
「君たちが今こうして一度に集まって目の前にいるということに運命めいたものを感じるよ。もしくは私の業のせいなのか。因果とでもいうべきか」
ジャノスはまた静かにため息とも深呼吸ともわからない呼吸をする。微かに唇は震えているが、エルシュたちにはわからない。
「もうわかっているとは思うが、君たちの過去の記憶は少し改ざんしてある。少しは戻っているだろうが、あの日のことをきちんと話そう。君たちにはそれを聞く権利がある」
ジャノスは息を吸い、ふうっと吐き出すように言葉を紡ぎ始めた。




