二つの扉
白髪の男が消えてから、ラウルはずっと苛立ちを抑えられないでいた。
「あの野郎、いちいちムカつくな」
「……とにかく、祭壇とやらまで行くしかないですね」
白髪の男に対して敵意をむき出しにするラウルとは対照的に、ダンロットは落ち着いている。そんなダンロットを少しは見習えよとシュミナールが促すと、ラウルはケッと吐き捨てながらそっぽを向いた。
「ラウル先輩も腹の虫がおさまらないようですし、ムカつくあの野郎をボコボコにするためにも早く行きましょう」
エルシュがそう言うと、ラウルは意気揚々と拳を胸の前でぶつけ合わせ、シュミナ―ルは表情を崩さず静かに頷いた。
遺跡の入り口から少し歩くと、目の前に二つの扉が現れた。どちらも見た目は全く同じに見える。何かわかればとサニャが感知魔法を発動させるが、何もひっかからない。
「魔法的なわかりやすい何かがかけられた様子はありませんね。どちらに行けばいいのでしょう」
サニャが困った顔で言う。
「わかんないんだったらとりあえずどっちか行ってみればいいだろ!」
「うわぁ出た、とりあえずやって確かめろ精神」
ラウルの勢いにエルシュがひきつった顔で言うと、ラウルはべっ!と舌を出した。
「仕方ねーだろが。だったら他にどうするんだよ」
それを皆で考えるんでしょう、とエルシュがラウルに突っかかっている。そんな二人を眺めながらダンロットはシュミナールをチラ見すると、シュミナールはふむ、と顎に手を当てた。
「時間がかかるとやっかいだ。とりあえずはラウルの言う通りどちらかの扉を通ってみよう」
シュミナールの言葉にエルシュはえっ?と驚き、ラウルはそらみたことかとドヤ顔になった。
「どっちを行きましょうね」
ダンロットが顎に手を当てて考え始めた直後、ラウルはさっさと右側の扉を行く。突然のことにダンロットが驚くと、ラウルは当然だと言うようにダンロットを見た。
「どっち行けばいいかわかんないなら、どっち行ったって構わねぇって」
ラウルは手をヒラヒラさせながら進んでいき、その後をシュミナールも付いていく。
「こいつはこういう奴だ。何かあってもこいつのせいにすればいい」
シュミナ―ルの言葉に、エルシュとダンロット、サニャは目を合わせて肩をすくめ、後をついて行った。
それからどのくらい歩いただろうか。またさっきと同じ扉が二つ現れた。
「またこれか。さっきは右側行ったから次は左に行ってみようぜ」
今度は左の扉を通って行く。するとまた同じ扉が二つ現れた。何回かランダムに扉を選んで通ってみるも、結局はまた同じ扉にたどり着く。
「これはさすがにきりがないやつですかね」
ダンロットが言うと、エルシュがやっぱりこうなるのねとため息をつく。
「でもこれで無作為に行っても同じ扉に行き着くことはわかりました。どちらかを選ぶ何かしらの基準がどこかにあるはずです」
サニャが両手をグーにして扉を見上げる。
「何か基準になるもの……」
「あっ」
皆で扉や扉周辺をくまなく探していると、少し離れた所から扉をずっと眺めていたダンロットが声を上げた。
「何かわかったのか?」
「ここを見てください」
ダンロットが左側の扉の一部分を指差す。扉には細かい模様が施されており、一見するとどちらの扉も同じに見える。だが、一部分だけ模様が違う箇所があった。
「ここの左箇所だけ三角模様の向きが逆です」
「すげぇ、よくそんなちっこいの見つけたな」
ラウルが呻き声をあげる。
「ってことはこっちの扉を行けばいいのかしら?」
「恐らくはそうだろうな。とりあえず行ってみよう」
ダンロットが見つけた模様の違う扉を通って歩いていく。先ほどは少しあるいてからまた同じ扉が出現したが、今回は何も出てこない。
「当たりってことみたいですね!」
サニャが嬉しそうに言うと、エルシュもホッと胸を撫で下ろした。




