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洞窟

ラウルの話を聞いた後、エルシュ達は渓谷への道を進み、その後は難なく無事にたどり着いた。


 エルシュたちはすぐ、サニャに感知魔法を頼む。草原では白髪の男のおかげで異獣魔に襲われたが、それ以外の野獣魔については守霊獣のおかげもあって出会っていない。

 だが、ここから先は草原のように守霊獣がいるわけではないので、いつ野獣魔に襲われるかわからないのだ。


「どう?隠れた野獣魔はいる?」

「……いえ、どこにも。むしろこんなにいないことの方が不思議なくらいです」


 両手を目の前にかざし神経を集中していたが、目を開け神妙な面持ちでサニャは答える。通常であればとこかしらに気配や魔力を消した野獣魔が隠れているものだ。なのにここには一匹たりともいる気配がない。


「逆に、洞窟の先から一体、属性が何かわからないものの気配があります」

「お師さま、もしくはあの白髪の男に関係する何かかしら。もしくはどちらか本人……」


 エルシュの言葉に一同はお互いに顔を見合わせる。


「とにかく行ってみるしかないだろう。何が起こるかわからない、より一層気を引きしめて行くぞ」


 シュミナールを先頭に、エルシュ達は渓谷の片隅にある洞窟へ足を踏み入れた。






 洞窟に入ると、ぴちゃんぴちゃんとどこからともなく水音がする。空気は澄んでいて時折心地よい風が吹いてくる。上からも地面からも鉱石が所々飛び出しているが、その鉱石からは純粋な魔力が少し出ているせいかほのかに発光している。その光のおかげで洞窟全体が蒼白い。


「綺麗ですね…!」


 サニャがキラキラと目を輝かせて言う。


「想像していたのと全然違うわ」


 エルシュは驚きながら呟いた。もっと禍禍しい場所かと勝手に思っていたが、反して神聖ささえ感じさせる。


エルシュたちが先を進むと、さらに驚くべき光景を目にする。そこには神殿の入り口のような建築物があり、入り口から先も明らかに人の手が加わった形跡があった。


「ここは……遺跡?」


 見たことのない紋様の装飾が壁に施されている。


「いつの時代のものですかね……こんな場所があるなんて帝都では知らされてませんが」


 ダンロットが首をかしげると、シュミナールは表情を変えずに言う。


「もしかするとジャノスの隠れ場所なのかもしれないな」


 ふと、エルシュは何かを思い出したかのように魔法でジャノスの直筆の本を取り出した。


「そういえばこの紋様、本のどこかで見たような」


 ペラペラと捲っていると、突如ひとつのページで止まる。


「これだわ!」


 そこには目の前にある建造物の紋様と同じ紋様が描かれていた。


「まだここのページまでたどり着けてなくて、さらっと眺めただけだったから解読できてなかったんだけど……」


『ケイオス遺跡』


 そこにはそう書かれていた。


「えっと、祭壇、魂と魔力、人形ヒトカタの生成……」


 単語を読み解いていきながらエルシュ達は顔を顰める。


人形ヒトカタを造り出す場所みたいですね」


ここでジャノスは、デーゼやあの白髪の男を造り出したのだろうか。それにしても、一体なんの目的でそんなことをしていたのだろうか。


「なぜ人形ヒトカタを造り出す必要があったのかとかそういうことは書いてないのかよ」


 ラウルに言われて、エルシュがさらに解読を試みようとしたその時。


『そんなもの読まなくても早く祭壇まで来てくれれば教えてあげるよ』


 突如、目の前に白髪の男が現れる。


「てめぇ!」


 すかさずラウルが攻撃魔法を繰り出すが白髪の男には当たらない。どうやら本体ではなく映像を見せられているようだ。


『血の気が多いんだね。祭壇は最深部だけど君たちならすぐにたどり着けると思うよ』


 クスクスと楽しげに笑いながら、白髪の男は告げる。


『あぁ、でもここは外部からの侵入者避けに色んなトラップがあるから気をつけてね』


 嬉しそうに微笑みながら言うその白髪の男の後ろに、ジャノスの姿があった。


「お師さま!」


 エルシュが思わず声をかけると、ジャノスはエルシュを見てほんの一瞬表情を崩すが、すぐにまた表情を消した。


 じゃぁねーと手をひらひらさせて白髪の男が言うと、映像は消えた。



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