規格外
「大丈夫ですかラウルさん!」
「わりぃ、サニャちゃんのおかげで助かった。ありがとな」
ラウルに異獣魔の爪が届く前に、サニャの防御魔法が間一髪のところで発動した。あの獣はあれほどまでにスピードが早いのかと、一同は気を引きしめる。
跳ね返された異獣魔の狼の顔が遠吠えをし始めた。すると、黒い影のようなものが複数現れ、そこから変異した狼の獣魔が次々と出現した。
「おいおい、クソめんどくさい展開になってきたぞ」
「仲間を呼べるのか」
「本体をちゃっちゃと倒さないとダメみたいね」
「くるぞ!」
狼の獣魔が襲いかかってくるが、それらをダンロットとシュミナールが次々と斬り倒していく。
その間に無詠唱で攻撃を繰り広げながら本体の異獣魔をエルシュとラウルが拘束魔法で動きを封じようとするが、背中から生える蛇が伸びて邪魔をしようとする。だがサニャの防御魔法がエルシュ達を蛇から守っていた。
「ラチがあかないわ、ラウル先輩!」
エルシュが声をあげる。
「1分間あいつを止めておけますか」
「任せとけ。サニャちゃん、防御魔法全振りするからよろしくな!」
「はいっ!」
サニャが防御魔法でエルシュ達を防御し、ラウルは攻撃をやめて拘束魔法のみに集中した。魔法の剣と魔法の鎖でがんじがらめにされ異獣魔は身動きがとれない。
エルシュが片手を異魔獣へ向けると、異魔獣の体が宙に浮き始め上空に上がっていく。エルシュも共に上空へ移動する。
地上からかなり離れた上空で、エルシュと異魔獣は止まった。エルシュは両手を突きだし詠唱を始める。
『金色の雷よ我の声に共鳴し その力をかの者へ撃ち降ろせ。全てを粉砕し跡形もなく滅ぼしたまえ』
詠唱と共に異獣魔の頭上と足元に金色の魔法陣が形成される。
『いでよ!ケラヴロンノディス!!』
唱えた瞬間、天から爆音と共に大きな雷が異獣魔に直撃して異獣魔は粉砕され、大きな突風が巻き起こる。地上にいるシュミナール達さえも気を抜けば一瞬で吹き飛ばされそうなほどの突風だ。
「ちょっ、ま、まじか」
剣を地面に突き刺して踏ん張りながらダンロットは思わず口にする。
ラウルはサニャを片手に抱えて飛ばされないように耐えている。
シュミナールは顔の前に剣を構えて踏ん張っていた。
突風が止んだ後、異獣魔は一欠片も残らず消え去っていた。
地上にゆっくりとエルシュが降り立つと、ラウルは呆れた顔で出迎えた。
「お前、いくらなんでもやりすぎだろ」
「そーですか?あれくらいやらないと決着つかないかと思って」
「やはり規格外すぎるな、お前は」
くつくつと笑うシュミナールに、そうですかねぇと首をかしげるエルシュ。そんな様子を、サニャはポカンとした顔で眺めていた。
「あ、ごめんね。せっかくの綺麗な三つ編みおさげがボサボサになっちゃってる」
後でちゃんと結い直してあげるね、とエルシュが言うとサニャは目をキラキラと輝かせて言った。
「す、すごいです……すごかったです!先輩やっぱりすごいです!!!」
エルシュの両腕を掴んできゃあきゃあと跳び跳ねるサニャに、今度はエルシュ達がポカンとする番だった。
「大抵の人間はびびるかドン引くか卒倒するかのどれかなんだけどな」
ラウルが楽しげに言う。
「サニャちゃんはやっぱりミーハーなんだね」
ダンロットが笑顔で言うと、皆で顔を見合わせ楽しげに笑い合っていた。




