異獣魔
「はぁ、草原の守霊獣様素敵でしたねぇ」
草原の守霊獣に会った後、エルシュたちは草原の一角で休憩していた。守霊獣の姿を思い出し、頬に両手を添えてサニャはうっとりした顔で言う。
「サニャちゃんはてっきり怯えてるのかと思ってたけどな」
「最初はちょっと怖かったですけど、語りかけてくるおっとりした雰囲気とかがすごく優しくて……しかも存在が神々しいと言いますか、とにかく清んだエネルギーを感じられてすごく素敵でした」
ラウルの意外そうな言葉に、サニャはきゃぁきゃぁと長い三つ編みおさげを振り乱しながら嬉しそうにはしゃいた。その姿をみて、この子は意外とミーハーなのかと他の面々はひそかに思う。
「そういえば守霊獣と会ってからなんとなく体が軽くなった気がするな」
ラウルが自分の体を見ながらつぶやく。
「守霊獣の魔力は混じりけのない純粋なものだから近くでその魔力にちょっと触れるだけでも回復するって文献で読んだことがあります」
エルシュが答えるとなるほど、とダンロットも頷く。
「その魔力で恐らくは野獣魔の変異と暴走を一時的に抑えているんだろう。……だがそれも全ての野獣魔を抑えられるわけではないようだな」
シュミナールが向ける視線の先には大きな生き物が禍禍しい魔力を放って立ちはだかっている。
熊のような顔ひとつに狼のような顔が両側に2つ。鋭い爪が手足から伸び、背中から蛇のようなものが四つ生えている。
「こいつは随分と変異しすぎなんじゃねぇのか」
「変異というよりは色々混ざってますね」
「まさか野獣魔の変異体ではなく人為的な異獣魔?」
「せいかーい!」
突然声がしたかと思うと、異獣魔のすぐ後ろ、少し上空に浮いている人物がいる。
「何者だ」
シュミナールが睨みを効かせるが、声の主にはなんの効果もない。
「初めまして。会いに来るのが遅くて待ってるのくたびれちゃった。だからこちらから会いに来たよ」
フードを下ろした白髪に赤目の男がにっこり微笑んでいる。その顔を見た瞬間、シュミナールの心臓が激しく鼓動する。髪の長さは違うが、夢で見た白髪赤目の女に瓜二つ。
「うっ」
過去の記憶からくる恐怖の苦しみが沸き上がり、シュミナ―ルは思わず目を見開いた。苦しみに必死で耐えるシュミナールを見て、そっか と白髪の男は言う。
「あんたがデーゼに魔力を吸われた奴か。大変だったね、ジャノスも随分と後悔してたみたいだよ。後悔しすぎて、無能で役立たずのデーゼを僕に吸収させたくらいだからね」
空中で胡座をかき片手で頬杖をつく。
「おい、てめぇどういうことだ」
白髪の男の言葉にラウルがドスの効いた声で聞く。そこには、いつものヘラヘラとしたお調子者のラウルはいない。
「知りたかったら早く洞窟まできてジャノス本人に聞いてみなよ」
ニヤリ、と白髪の男は口の端を上げる。次の瞬間、白髪の男の目の前に爆発が起こる。エルシュが片手を向けて無詠唱魔法で攻撃するが、煙が消えるとそこには無傷の男がつまらなそうな顔をしていた。
「やだなぁ、君たちの相手は僕じゃなくてこっちこっち」
白髪の男が告げると異獣魔がウオォォォォ!!!と吠えた。
「ジャノスが執着する君にずっと会いと思ってたんだ。会えてよかった。こいつにやられるほど弱くないってわかってるけどさっさと倒して早く洞窟に来てよね」
楽しみはこれからだよ、と嬉しそうに白髪の男は言いながら魔法陣の中に入っていく。
「待てこらてめぇ!」
ラウルが攻撃をしようとした時、突如目の前に異獣魔が現れ鋭い爪で振りかぶる。その爪がラウルを切り裂かんとした瞬間、ラウルの前に防御結界がはられ、異獣魔が跳ね返された。
☆獣魔の種類★
野獣魔:野生の獣魔
異獣魔:人為的に造られた獣魔
その他にも幾つか種類があるがその総称が獣魔である




