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ベルシエ到着

 魔法が使えない地域を抜けたエルシュたちは、無事にベルシエに到着した。


「着いたーっ!」


 エルシュは馬の上で万歳をし、それに続いて皆も歓声をあげる。


「ふと疑問だったのですが、魔法が使えない地域を通るという危険をおかさずとも帝都からベルシエまで転移魔法で来ることはできなかったのですか?」


 騎士団の一人が何気なく尋ねる。


「できなくはないんだけど、魔法が使えるようになるとはいってもベルシエ周辺は通常の地域よりもやはり弱くなってしまうのよね。今回は人数が多かったからベルシエまで無事に到達するには少し厳しいと思ったのよ」


 エルシュは申し訳なさそうに答えた。


 自分たちだけであれば容易にできたはずだしそれを選んだであろう。しかし複数の騎士団員を連れてとなると、万が一転移魔法が誤作動をお越し騎士団員が全く異なる地域へ飛ばされてしまうリスクも捨てきれない。


「今回はベルシエでゼダルの兵士を牽制するためにも騎士団の人員はある程度必要だったからな。致し方あるまい」

 苦労をかけたな、とシュミナールが言うとエルシュはいえいえと首を振る。


「この旅の最終目的は元はと言えばお師さまが原因ですし、私自身にも関わること。むしろ巻き込んでしまってるようで申し訳ないです」


 エルシュの表情が少しだけ揺らぐ。いつも飄々として本心は読めず、時に冷徹ささえ感じさせ人の心など持ち合わせないなどと噂されていたあのエルシュが、ここの所ずいぶんと表情豊かに感情を表すようになったものだとシュミナールは内心驚く。


「お前がそうやって気にやむ必要はない。これは国そのものにも関わることだからな、俺達が介入するのは当然だ。別にジャノスが何かを企んでいたからといってその教え子のお前がひとりで抱え込むようなことではない」

 

 エルシュの瞳を覗き込むようにしてシュミナールは言う。


「そうだぜ、お前はいっつもそうやってなんでもひとりで抱え込みたがるけど、こういう一大イベントの時くらい俺達のことちゃんと頼れよ。俺たちだってそこそこできる奴らだってお前も知ってんだろ?すぐにやられるほどやわじゃねーよ」

 

 ラウルがニヤッと笑うとサニャも飛びきりの笑顔をエルシュに向ける。


「わかったろ、エルシュは一人なんかじゃないんだから。でも誰よりも一番には俺を頼ってほしいかな」


 ダンロットがそう言うと一斉にヒュー!お熱いねぇ!と野次が飛ぶ。


「な、なにこんなところでバカなこと言ってるのよ!……でも、本当にありがとう。皆さんもありがとうございます」


 顔をほんのり赤くしてうつむきがちに言うエルシュを見て、騎士団員たちも思わず、おぉ!猛朱の魔導師様が照れた!可愛い!と色めき立つ。


 そしてそんな様子に、ダンロットは皆がエルシュの魅力に気づいてしまうのが嬉しいようなちょっと悔しいような、複雑な気持ちを抱えていた。






「エルシュたちは無事にベルシエに到着したようです」


 エルシュたちの最終目的地である洞窟内で、フードを被った白髪の男がジャノスに告げる。


「お前は何かをしようとしていたようだが?」


 ジャノスがフードを被った白髪の男に尋ねる。


「どうせならベルシエに到着する前にエルシュの身柄だけを確保できればと思ったんですが、まぁそう簡単にはいきませんでした」


 両手を肩近くまで横に広げてお手上げポーズをする。


「余計なことはしなくて良いと前にも言っているはずだ。デーゼのニノ前になりたいのか」


 ジャノスが冷たい目線を送ると、白髪の男は肩をすくめて黙り込む。


「時間はまだある。慌てることはない」




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