騎士団長の強さ
盗賊たちから親方と呼ばれる短髪のその男、盗賊の頭の前にはシュミナールが立ちはだかっていた。
「悪いがそこをどいてもらうぜ。俺はまだ捕まりたくはないんでね」
盗賊の頭は口の端を上げながら余裕そうに吐き捨てる。だがその顔には冷や汗が出ていた。
「見逃すわけがないだろう」
シュミナールは剣を構える。
「だったら強硬突破するまでだ!!!」
盗賊の頭は持っていた大きな斧のような武器を頭上に振りかざし片手でブンブンと振り回す。次第に竜巻が巻き起こり、男はその竜巻をシュミナール目掛けて振り下ろした。
「くらえ!!!!!」
竜巻は轟音を鳴らし通り道にある全てを破壊しながらシュミナールに一直線に向かっていく。シュミナールに到達した瞬間ドオオオン!!!と激しい音と共に破裂した。
シュウウウと風が萎む音と煙があたり一面に起こる。
「や、やった!親方の技が命中した!」
わっ!と盗賊たちが歓声を上げたその時。煙の奥から人影が見え、そこには傷ひとつ無いシュミナールが剣を目の前に構え立っていた。
「な、なんで……あれを受けて無傷だと?防御魔法もないのになぜ!?」
盗賊の頭も周りの盗賊たちも一斉に動揺する。
「防御魔法がなくても騎士団の騎士は戦える。むしろ魔法に頼って剣技をおろそかにする騎士などもはや騎士ではない」
いつも以上に通る低い声でシュミナールは言う。
「俺はずっと魔法を使わずにこの腕のみで戦ってきた」
その言葉に短髪の男がハッと何かに気づいた顔をする。
「ま、まさか……お前が魔法を使わないあの有名な騎士団団長?」
ガクガクと震え出す盗賊の頭の様子に周りの盗賊たちもざわめき出す。
「だとしたら災難だったな」
そう言ったか言わないかの瞬間にシュミナールはいつの間にか短髪の男の目の前にいる。
「い、いつの間に!!」
気づいた時には、シュミナ―ルが峰打ちをして盗賊の頭を倒していた。
全てがシュミナールたちの手はず通りだった。ダンロットたちは盗賊に追われ始めた時点で救援信号を空中に撃ち知らせていたため、駆けつけた関所の騎士団たちに盗賊は縄で縛られ捕まった。
それはもしも盗賊に奇襲された場合には必ず捕らえるので救援信号が出たら速やかに駆けつけるようにとあらかじめ打ち合わされていたことだった。
「そういえば、どうしてラウルさんは剣が使えたのですか?」
サニャが不思議そうに尋ねる。魔導師は基本的に魔法を主として使うため剣術は得意ではない、むしろできない者の方が多い。
「あぁ、自分で言うのもなんだが俺は騎士団に入るか魔法省に入るかどちらも選べるくらい優秀だったからな。魔法省を選んでからも、時折シュミナールに稽古してもらってた」
「先輩って性格はあれだけど実力はちゃんとあるんですよね」
ラウルの言葉にサニャはすごい!と目を輝かせると、エルシュは腕を組んでそう言うとため息をつく。
「銀朱色の髪の魔導師を生きたまま捕まえられていたら一攫千金だったのに……」
盗賊の頭がうなだれながら呟いた言葉を、シュミナールは聞き逃さなかった。
「それは一体どういうことだ。誰に言われた」
「フード被った知らねぇ奴だよ。生捕りできたら破格の金をもらえることになってたんだ。魔法が使えないこの地域なら俺達でもできるだろうってさ。うまい話すぎると思ったんだが、前金だってたんまりくれたらから一攫千金は嘘じゃねぇんだろうなって信じてたんだ」
盗賊の頭の話を聞いて、シュミナ―ルが顔を顰める。
「ジャノスだろうか」
「本人かもしくは関係者だろうな」
シュミナールとラウルの話を聞きながら、ダンロットは仕組まれた奇襲に苦虫を潰したような顔になる。
「……関所の騎士団に盗賊たちの身柄の引き渡しはすみました。先を急ぎましょう」
ダンロットがそう言うと、シュミナ―ルとラウルは厳しい顔で静かに頷いた。
シュミナールたちと盗賊たちの戦いを少し離れた崖の上から眺める男がひとり。フードを被ったその男は事の成り行きを見届けてから馬でその場を去っていった。




