盗賊との戦い
一行は何事もなく順調に道程を進んでいるかに思えた。だがシュミナールとダンロットは何かに気づいて警戒する。
「ダンロット、エルシュから離れるな」
「はっ!」
シュミナールが警告すると後方から沢山の馬の足音が聞こえてくる。
「集団で何者かがすごい勢いで追いかけてきます!」
騎士団の一人が言うと、シュミナールは号令をかけた。
「全員全力で走れ、はぐれるな!振り落とされるなよ!」
馬を全力で走らせる先に、さらに見知らぬ人間の集団が見える。
「ちっ、待ち伏せか」
たどり着く手前で手綱を引き、その場に止まる。目の前には短髪で体の大きな男が大きな斧状の武器を持ち先頭に立ってニヤニヤしながら待っていた。
「よぉ、魔導師ご一行さまと騎士団さんたちよ。痛い目見たくなかったら女と金目になりそうなもの全部置いていきな。そしたら見逃してやらぁ」
刀を持ちながらニヤニヤとゲスい顔をした男たちに、前後を挟み撃ちにされ両側は崖の壁。エルシュたちに逃げ場はない。
「お前たちが噂の盗賊か」
シュミナ―ルの言葉に、騎士団の幾人かは馬に乗ったまま、また幾人かは馬を降りて剣を抜く。
「ほぉ、やろうってのか。魔法も使えないってのに剣だけでどれだけ戦えるのかねぇ」
「知りたいのならやってみればいい」
シュミナールが感情の乗らない低い声で答える。
「ふん、望み通りお前ら全員息の根止めてやらぁ!」
短髪の男の一声で盗賊たちは一斉に飛びかかると、ダンロットたちは剣を構えてそれに応戦する。
盗賊たちの思惑は見事に外れた。魔法を使えない騎士団などたいしたことはないとたかをくくっていたが、ダンロットの部隊は剣術にも長けた部隊なので、難なく応戦していた。
「エルシュ!俺の側から絶対に離れるなよ!」
「わかった!」
盗賊とはいえ民間人、さらには捕らえて尋問する必要があるため、騎士団は相手を斬ることはせずに峰打ちをしている。だが腕や足などの骨、肋骨などを折って戦闘不能にしていた。
「背中ががら空きだぜ魔導師さまたちよぉ!」
ラウルとサニャの背後から盗賊が不意討ちを仕掛けてきた。
(どうしよう!切られる!)
サニャが思わず目を瞑った瞬間に、盗賊のうめき声が聞こえる。目を開けると、ラウルが剣を持っていた。
「ラウル殿!申し訳ない」
騎士団が慌てて声をかけるとラウルは笑顔で騎士へ言う。
「こっちはなんとかなるから気にすんな!」
ラウルは咄嗟に馬の鞍にくくりつけていた剣を抜いて盗賊とやりあっていたのだ。
「な、なんで魔導師が剣を使えるんだ」
盗賊の一人がラウルを見て驚愕すると、ラウルはその盗賊に軽々と峰打ちをする。
「俺様はなぁ、特別なんだよっと!」
次々に盗賊を倒していくラウルをサニャは驚きと憧れの眼差しで見つめていた。
「どういうことだ…」
短髪の男は信じられないものを見ている顔でつぶやいた。優勢だと思い込んでいたのに、明らかに劣勢になっている。
「親方、ここは引いた方がいいんじゃ…」
「そ、そうだな」
短髪の男が数人の盗賊を引き連れて逃げようとしたその時。
「逃げられるとでも思っているのか」
目の前に虚ろな目をした騎士団団長がひとり立ちはだかっていた。




