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狙うもの 狙われるもの

 エルシュたちは転移魔法でカルドナ領内の関所に着いた。ここから第一の目的地ベルシエまでは魔法が使えない地域なので、事前に関所へ転移魔法で送っていた馬で移動することになる。


 それぞれが馬に乗るが、乗馬があまり上手くないサニャだけはラウルの馬に同乗することになった。


「あの……二人も乗せて重くないでしょうか、それにラウルさんにも迷惑なのでは」


 足手まといになるまいと決めてきたのに、既に足手まといになってしまっているようでサニャは落ち込んでいた。


「なーに、サニャちゃんは小さいし軽いだろ。それにサニャちゃんみたいな可愛い子を乗せれるなんてこいつも喜んでるさ」


 なぁ?と馬に話かけると、馬も答えるかのように頭を上下してサニャにすり寄る。


「ありがとうございます」


 少しホッとした様子でサニャはラウルと馬にお礼を言った。


「エルシュも俺の馬に一緒に乗るか?」


 ラウルたちの様子を見ていたダンロットがエルシュに言うと、エルシュは一瞬キョトンとしてからえぇ!?という顔をする。


「私はサニャみたいに小柄で可愛いわけじゃないからやめとく。なんかこっぱずかしいし」

「そんなことないけどな、それに小さい頃はよく二人で遠出しただろ。何を今さら」

「な、いつの話よ。ずいぶん昔の話じゃない」


 珍しくエルシュが照れるのでダンロットはちょっと嬉しくなる。


「あの頃はさ、二人でよく馬で遠くまで走ったよな。」

「そうね、遅くなっておばさんたちによく怒られたっけ」


 エルシュとダンロットは思い出してふふふ、と笑い合った。


「……いつもダンロットは一緒にいてくれたよね。なんかごめん。今回も巻き込んじゃった」


 遠くを見つめながら悲しげにエルシュは謝る。


「別に。いつだって俺は自分の意志でエルシュのそばにいるんだから、気にするなって言ってるだろ」


 エルシュがダンロットを見ると、ダンロットはいつものようにっこり笑って答えた。


「……そうだね。ありがと」


 いつもは気丈に振る舞うエルシュが少しおとなしく、弱々しくさえ見える。


「なんだよ、らしくないじゃん。でもさ、俺にだったらいくらでもそういうの見せていいんだからな」


 遠慮すんなよと肩で小突くと、エルシュも負けじと反撃する。そんな二人の様子をラウルとサニャは嬉しそうに、シュミナールは相変わらず無表情だがほんの少しだけ口の端を上げて見つめていた。


「よし、全員準備はいいか。出立だ」

 

 シュミナールの号令で、馬に乗ったエルシュたちは関所を出て歩きだした。






 エルシュたちが歩く道を、少し遠くの崖上から密かに眺める者たちがいる。


「おい、魔導師さま達のお通りだぜ。なんだよ、騎士もついてやがる」

「ここじゃ魔法は使えないんだ、魔法の使えない騎士なんて対した戦力にもならないだろ。地理的にも俺たちの方が有利に決まってる」

「よし、親方に報告だ」


 男たちは崖を降り少し離れた木々の中を駆け抜けていった。そして、茂みの中に突如現れた野営のような場所にたどり着くと、そこには一人の男を取り囲むようにして大勢の男たちが立ち並んでいた。


「親方!」

「どうした、獲物が来たか」


 短髪で目付きが鋭くがたいも良い親方と呼ばれるその男は、地面にあぐらをかいて座っている。


「魔導師さまご一行のお通りですぜ。騎士も同行してますが魔法が使えない以上は断然こっちが有利です」

「ほぉ、どんな魔導師たちだ」

「いい身なりでいい馬に乗ってたんで恐らくは帝都から来たんじゃないですかね。女は綺麗な赤い髪をした女と銀色の長い三つ編みおさげ髪の女二人だけです」


「長い赤い髪の女か……帝都から来たんだったらもしかしたらもしかするな」


 親方と呼ばれる男はニヤニヤと笑っているがその瞳はギラついて獲物を狙う目をしている。


「よし、狩りに出るぞ」


 親方と呼ばれる男の号令に、男たちは一斉に支度に取りかかった。




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