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判定の時

 サニャとニアの演習試合が終わり、サニャとエルシュたちは魔法省の会議室に集まっていた。


「さて、サニャが任務に同行できるかどうかの判定だが、それぞれどう思う」


 シュミナールはサニャ以外の全員の顔を見て尋ねる。


「その前にひとつ確認させてください」


 エルシュが手をあげた。


「サニャ、以前より攻撃魔法は強くなったようだけれど、格段に強くなったというわけではないわよね」


 エルシュがサニャを見つめながら問う。


「はい、私には攻撃魔法を格段に上達させるには時間が足りませんでした」


 サニャの言葉に一同は黙り込む。


「なので、防御魔法を特化させることにしたんです」


 攻撃魔法を上達させエルシュたちと共に戦う、それが同行するために必要なことだと思っていた。


 しかし攻撃魔法には数多くの種類があり、上級の攻撃魔法へ変化させるにも豊富なバリエーションがある。その全てを習得するには時間があまりにも足りなかった。


 でもどうしても同行したい。同行するためにはどうすれば良い?必死に考えたサニャはひとつの可能性に気づいた。


 防御魔法を特化させればいい。もし攻撃された場合、自分で自分の身をきちんと守ることができれば足でまといにもならないし、一度に全員を守れるようになれればエルシュたちは攻撃だけに集中できる。


 元々攻撃よりも防御や治癒魔法が得意だったサニャにとっては防御魔法を特化させることは攻撃魔法を完全に習得させるよりも容易かった。


 詠唱魔法と無詠唱魔法を同時に使うことも攻撃魔法はままならないが、防御魔法であればほんの少しの間だけならできる。一か八かの賭けになるが、もしこれでだめだったら自分としても諦めがつく。


「防御だけでなく治癒魔法と蘇生魔法も上級まで全て習得しました。これでお役に立てるはずです」


 内心ドキドキしているが、そんな様子は見せずにサニャは堂々と発言した。


「どうだ、エルシュ」


 シュミナールが促すとエルシュは渋い顔をする。


「確かに防御魔法と治癒・蘇生魔法に特化している人間が同行するのはありがたいです」

「ラウルは」

「……同じく」


 ラウルも複雑な顔をして返事をする。


「ダンロットはどうだ」

「俺は皆さんの判断に任せます」


 ふむ、とシュミナールは腕を組み考える仕草を見せる。その様子に一同は息を飲んだ。


「あのニアの攻撃を全く受けないのは特級魔導師並みの実力だ。攻撃はそこまで強くなくても防御魔法を一手に引き受けてくれるのであれば他の人間は攻撃に集中しやすい」


 サニャはうつむいたまま震える両手を握りしめる。


「決まりだ」


 その言葉にサニャは顔をあげ、みんなの顔を見渡しながらいつの間にか涙をボロボロと流していた。


「よく頑張ったな」


 ラウルは立ち上がりサニャの元へ来て頭を撫でると、サニャは嬉しさと同時に今までの血の滲むような努力の時間を思い出して、両手で顔を覆いながら声を上げて泣き出した。


 そんなサニャを、最初は複雑な面持ちで見つめていたエルシュやラウルも含め皆が優しく見守っていた。






 会議が終わり、会議室にはエルシュとラウル、シュミナールだけが残っていた。


「団長にお話があります。これを見てください」


 エルシュはジャノスの書いた本を差し出す。


「ここに、当時の魔導師や騎士団員の魔力が記されているのですが、……なぜかシュミナール団長の魔力も記載されていました」


 エルシュは解読した内容を説明する。ラウルはありえない、という顔をして聞いていたが、シュミナールはふに落ちたというような顔をしていた。


「なるほどな、そういうことか」

「おい、どういうことだよ」


 シュミナールは先日の夢の話を詳しく二人に教えた。


「この書記が本当のことで、俺が見た夢が過去の本当の記憶だったとすれば合点も行く」

「……団長は人形ヒトカタに魔力を奪われ、命はかろうじて助かったということですか」

「だとしたらなんで誰も覚えていないんだよ!俺もお前もそんな記憶全くないんだぞ。お前は小さい頃から魔力がほとんどないって……」

「あくまで仮説でしかないが、おそらくはジャノスが魔法で記憶を操作したんだろう。最低でも俺と俺の近くにいる人間、関わる人間の記憶くらいは操ったんだろう」


 夢の中でジャノスは自分のせいだと悲しんでいた。だとすれば罪滅ぼしのため、もしくは自分にとって都合良くするために記憶を操作した可能性が高い。


「お師さまであればそれくらいのことは容易いでしょうね……でもなぜお師さまは当時の団長に謝ったのでしょうか」


 エルシュは珍しく動揺した声で言う。


「わからない。本人に聞くしかないのだろうな」


「あいつ……一体なんなんだよ!どれだけ俺の大事な奴らを傷つければ気が済むと思ってるんだ!」


 怒りに任せてラウルはダンッッ!!!と壁を強く叩く。シュミナールは何の表情も見せずにただラウルを一瞥した。


 だが、エルシュはそんなラウルを今まで見たことがなく、驚くばかりだ。しかも師に対してこんなにも怒りを持っていたことを知らなかった。一体ラウルやシュミナールの過去に何があったのか。師がどう関係しているのか。


 きちんと知る必要がある、とエルシュは初めて師に対して不安な気持ちを持ち始めた。





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