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魔力の行方

 帝都ダーニャよりはるか東、とある山の一角にある洞窟の奥から、時折叫び声が聞こえてくる。


「ヴアァァァ!グアァァ!!……グッ」


 祭壇らしき真ん中で魔導師が一人崩れ落ちた。


「なーんだ、またダメか」


 白髪赤目の男はつまらなそうに言い、ジャノスはチラリと目線だけを向ける。二人の後ろには数人の屍が横たわっていた。


「この膨大な魔力と魂を受け入れられるだけの生身の人間なんてやっぱりいないんじゃないですか」

「……お前が今まで吸い込んだ魔力と魂の数はあとどのくらいだ」

「さぁ、いちいち数えてないからわからない。デーゼの分ももらったからまだかなりの量残ってるはずですが」


 ジャノスが片手をあげると祭壇の真ん中に横たわる屍がふわりと浮き、後ろの屍の元へ移動する。


「これだけ魔力が漏れてしまってはエルシュ達がここに来るのも時間の問題だろう。生身の人間を使うのはここまでだ。とりあえずこの屍たちを使え」


 ジャノスは屍を見ながら思考を巡らせそう言うと、ジャノスの言葉に白髪の男は嬉しそうに笑う。


「いいんですか?これだけの魔力と魂と屍が揃えばそれなりにかなりのものができると思いますよ」


「構わん。……それにエルシュが対抗できないのであればその程度のことだったということだ」

「抵抗できないなんて思ってもないくせに。どうせおびき寄せるための口実なのでしょう。可愛い可愛い弟子に一目会いたいだなんて健気ですね」


 白髪の男がからかうと、ジャノスは表情の読めない顔で男を一瞥した。






 その頃、自室でエルシュは師の書記を必死に解読していた。


 簡単には解読できないが所々わかる言葉がある。ふと、見知れた名前があることに気がついた。どうやら当時の魔導師や騎士団員の魔力量が記されているようだ。

 ラウル、ダイナ、あとは幼少期のエルシュが知るジャノスの近くにいた数人の名前の中にあるはずのない人物の名前を見つける。


「シュミナール団長の名前……、魔力量……え?」


 そこにはラウルと同じほどの魔力量が記されていた。シュミナールにはほとんど魔力量がないはずなのに、なぜだろう。そういえばダイナはラウルとシュミナールの事を知っていた。当時何か関わりがあったのだろうか。


 他にも情報がないかと書記を真剣に眺め、そして気になる一文を発見した。


人形ヒトカタの器の完成、名をデーゼとする』


(お師さまは人形ヒトカタの器を造っていたのかしら、だとしたらなんのために?突然いなくなったのはそのためだった?)


 エルシュが無邪気に魔法を覚えている最中にシュミナ―ルは得体の知れない何かをしようとしていた。もしもエルシュの魔力も必要としていたとしたら、いずれ必要となるその時のために連れていくことはせずにあえて帝都ここに残していったのだとしたら。


「私、お師さまのこと何も知らなかったんだわ」


 エルシュのつぶやきは、静かな部屋に鳴り響いた。





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