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猪突猛進

あの日からレイヴンは何度も、それはもう何度も諦めることもなく()()声を掛けてきた。

その度に私はとにかく躱すように言葉を選び、ヒルデはひたすらに攻撃的な言葉を選んでいた。

それでもなお、諦めない―というよりは言葉の真意を理解していないのかもしれませんが―その精神にある意味関心していた。

さすがの私も余りのしつこさに我慢の限界を迎えようとしていました。

なので私は遠回しの言い方を辞めて直接何も知らない彼に教えてあげることにしたのです。


「マリアンヌ王女殿下、先日とてもいい茶葉を出すお店を見つけたのですが良ければ本日いかがでしょうか?」

「……申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。」

「え……?あ、あぁいつものように何か予定でもあったのでしょうか?」

「いいえ、急ぎの予定はありません。」

「でしたら……。」

「先に言わせていただきます。私はあなたの想いに答えることはできません。今私にはジークハルト様という婚約者がいますし、十分幸せなのです。ですのであなたと共に行くことはありません。」


はっきりと拒絶を口にする。

順当に行けば私は未来の公爵夫人。

そしてダインス伯爵家は公爵家の纏める領地の一つです。

であればこのようなことをすれば反発されることもあるかもしれません。

ですが、ダインス伯爵家の事情も鑑みると優秀な兄がいてそちらが爵位を継ぐことになっています。

そして、この問題に対してはダインス伯爵家の責任である旨が既に報告されています。

現ダインス伯爵曰く、優秀な兄と自分を比較して自棄になりそうだった頃丁度私が領地を訪れたらしく、私に恋したことで真っ当に―周りが見えていないことが多いが―教育を受けるようになったのだとか。

そうして頑張っている息子にその数年後に婚約が発表されたことを伝えることができずこうしてずるずると引き摺っていたのだそう。

今回の件に関してジーク様の元へも事情を説明に伺うとのことでした。

ならばあとは本人にも真実を告げるのみ。

これで丸く収まる……はずだったのですが。


「そう、ですか。つまり王女殿下は()()婚約しているので私の話を受けることはできないとそういうことですね……。」

「「……え?」」


隣にいたヒルデとも驚きの声が重なる。


「わかりました。であれば今すぐにでもそのジークハルトと話をつけてきます!!必ずや吉報をお持ちしますのでお待ちください!!!!」

「ちょっとお待ちくださいっ!!!」


悲痛な制止の声は届かずそのまま彼方の方向へと走り去るレイヴン。


「これ、もしかしなくてもまずいですよね?」

「……うん。でも兄様のこと知らなかったみたいだしまだ間に合う?」

「そうとなれば……スザンナ!」

「はい、既に追跡はさせております。」

「さすがです!追いますわよ。」


レイヴンを追いかけたのですが、当然ジーク様の知名度は高くレイヴンがその正体を突き止めるのに時間はかかりませんでした。

結局レイヴンはその猛進さで馬単騎で公爵家へと直行。

私たちにはそのような体力はないので馬車で追いかけることに……。

当然追いつけるわけもなく、次にレイヴンに会うことになったのは既に手遅れの状況だったのでした。


いかがだったでしょうか?

続きは明日となります。

お楽しみに!


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