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お久しぶりです、私は

入学式はつつがなく終わりました。

今年の首席は一応私で、次席がヒルデになっています。

ジーク様の時と同じで主席の私が軽い挨拶をして、生徒会長から祝辞と軽い説明会が行われました。

今の生徒会長は北位貴族の纏め役である公爵家の子息でした。

一度王都でのパーティでお会いしたことはあったのですが、それからの親交はありません。

といっても今の学園で親交深い方がいるかといえば、いないのですが。

6歳から既にブリュンヒルド家で多くを過ごしていたことと、政務に携わりたい一心でジーク様の傍にいたこともあって家同士での関りはあっても同年代の人と交流する機会はなかったのです。

幼い時からの交流は大事です。

ですが、手遅れなんていうことはありません。

今からでもまだ遅くはないのですから。

実際ジーク様達もこの学園に入学するまで同じように交流のあった方は少なかったですが、卒業するころには縁ができた家も多かったです。

私も未来の公爵夫人として多くの縁を作りたいと思っています。


「マリアンヌ王女殿下、今お時間よろしいでしょうか。」


唐突に後ろから声が掛かる。

急な声掛けに色々と驚くも平静を装い振り返る。

隣のヒルデは若干眉をひそめていました。

というのも私達は今帰路につこうとしていたところ。

幾つかの誘いはありましたが、近々行われる夜会の為の買い物をヒルデと行く予定だったのです。

私もヒルデも楽しみにしていたので今日幾つか頂いたお誘いもお断りしてこうして移動していたのですから。

何より声がかけられたのは私だけ。

正直私も怒りはこみ上げましたが、ぐっと堪えます。

それでもこの5年私達も多少は落ち着いてきました。

思うがまま行動するのは淑女にあるまじき行為。

ということでできるだけ感情を表情に出さないよう努めてきたのです。

もしかしたら急用なのかもしれません。

ともあれば今後大事な取引先になるのかもしれません。

だからこそ無下に扱うようなことはせず、話をまずは聞きましょう。


「はい、少しであれば構いません。ヒルデもいいですか?」

「……私もマリアンヌがそういうのであれば否はありません。」


ヒルデも私に賛同する形で会話に参加する。

こうしてヒルデもいることをその曇っている目に教えてあげるのです。


「ありがとうございます。そしてお久しぶりです、私はダインス伯爵家が次男レイヴンです。覚えていますでしょうか?」


相変わらず視線は私に向けたままヒルデには触れることはありませんでした。

なんでしょう?わざとでもなさそうですし、何かしらの敵意も感じられません。

ヒルデもそれに気が付いたのか同じように困惑している様子です。

そしてダインス伯爵家といえば西位貴族の内の一つです。

であれば同じ西位貴族かつその代表であるブリュンヒルド家を蔑ろにする理由なんて思い当たりません。

そしてレイヴンとは確かに面識はあったかと思います。

かつて多くの貴族家に足を運んでいたときの内の一つで、そして私がジーク様にお会いする出来事があった日の訪問先がダインス伯爵家でした。

その後にお会いしたことはなかったので実に7年振りくらいになるのでしょうか?


「ええ、覚えていますわ。あれからもう7年程ですか。お互いもう学園に入学しているのを思うと時の流れはあっという間ですね。」

「はい、あの日のことは昨日のことのように覚えています。こうして再びお会いするのを心待ちにしておりました。なによりあの時から()()()()()()()()()よかったです。」


なんだか言葉の熱量に絶妙な温度差を感じています。

そして最後の発言。

私は身長の伸びを気にしているのにこう言われると流石に顔が引きつります。

ええ、きっと変わらず元気そうでよかったということでしょう。

うん、そういうことにしましょう。

若干の雲行きの悪さを覚えつつも私は気にしてないように装います。


「……それで本日はどうされたのですか?」


ヒルデは要件を早く聞こうと間に割って入る。

本来こうしたことは失礼ではあるが、あちらもヒルデを無視していたようなものだそ私も少しお冠だったのでお互い様でしょう。

その証拠に今気づいたかのようにヒルデに目線を向ける。

明らかに私よりも身長も高くなっているヒルデの姿を認識していなかったのはどういうことなのでしょう?


「失礼、余りの嬉しさに周りが見えていなかったようです。……本日はこれにて失礼します。次は()()()()()()()話しましょう。これにて。」


そう言い残してすぐにその場から離れていきました。

流石に私もヒルデも驚きすぎて口が塞がりません。

基本的に男女二人で話すときはよほど親しい間柄―身内や婚約者、恋人などでない限りありません。

それもそうです。

貴族社会で何が噂になって揚げ足を取られるかわかったものではないのですから。

それを婚約者のいる女性にその婚約者の妹の前で堂々と言う辺り、よほどの大物ということなのでしょうか……。

もしくはただの世間知らずなのか。

ともかく冷たい風が背筋を通り過ぎたせいなのかはたまたレイヴンに対してなのか、二人そろって身震いしたのは言うまでもありません。

いかがだったでしょうか?

新しい登場人物(?)がでてきました。

この人物が何を思って行動しているのか……そしてマリーとヒルデは平和な学園生活を送れるのか、今後をお楽しみに!!

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