幸せの抱擁
あの生徒会での勧誘から早数か月。
時間の流れは速いものでもう夏季休暇に入った。
入学してすぐは色々騒がしかったが、それから特に目立ったことはなく平穏な学園生活を送ることができた。
領地のほうでも職業訓練校の設立は順調に進んでいたようで、大きな問題も上がってくることはなかった。
そうして夏季休暇には僕たちにとって大事なイベントが控えていた。
「ジーク様、お姉様おかえりなさいです!今日も無事帰ってきてくれてマリーは嬉しいです!」
「……兄様姉様、おかえり。」
「二人ともただいま。」
「二人も元気そうでよかったわ。」
二人は僕たちが城に戻ると飛びつくように歓迎してくれた。
一週間ほど前に戻った時も同じように迎えてくれたっけ。
定期的に領地に帰るようにはしていたが、今回に関しては大事な用事があるのだ。
それは
「ついに婚約が大々的に発表されるのですね!待ちきれませんでした!」
「そうだね、結局入学前は色々立て込んだせいでこうして遅れてしまったからね。」
「ほんとにっ!ほんとにっ!!よかったですぅ。」
「マリーよかったわね。」
「……ん、おめでと。」
「うわぁーん!」
気持ちが溢れて泣き出したマリーを二人が宥める。
一部の人間には交付されていたとはいえ、今回大々的に王都にて披露宴を行うことになった。
最近の貢献に対してとお詫びも含めての王族からの粋な計らいだった。
「数日後に控えてるから最終準備の確認をしていこうかな。セバス、大丈夫そうかな?」
「はい、準備も全て滞りなく進んでおります。といっても基本的に王宮側で手配してくれているものが大半です。ちなみにそちらのほうも問題なさそうでした。」
「そっか、ありがとう。もう邪魔はされたくないからね。」
「……そうですな。」
婚約に関して言えば上手くいかないことが多かった。
正直今でもステフに対しての気持ちは残っている。
彼女は現状でも満足しているとは言ってくれているが、いつかはなんとかしたい。
その上でマリーも幸せにしてあげたいという気持ちも持っている。
欲張りだけどそれが僕の一つの目標だから。
三人の元へ戻り抱きしめる。
「ふぇ!?」
「少しだけこうさせて。」
今の幸せを胸に抱いて噛み締める。
マリーは驚き、ステフは仕方ないなといった表情で微笑み、ヒルデは嬉しそうに抱きしめ返す。
披露宴が一層楽しみになった。
前回の更新から大変お待たせ致しました。
これからも楽しみにして頂ければ幸いです。
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