大切な時間
部屋に沈黙が流れる。
殿下とお互い目を合わせたまま見合っている時間が続いた。
「ふぅ……一応理由は聞かせてもらえるのかな?」
「はい、といってもシンプルな理由です。」
「ほう?それは?」
「ただ私は大切な時間を大切な人達と過ごしたいからです。」
「へ!?」
なんとも間の抜けた声が殿下の口から洩れる。
いやまぁ気持ちはわかる。
国への貢献だとか学園への貢献を無下にして領地に帰りたいというのは外聞はよくないだろう。
だが僕は既に領主である身だ。
他の生徒に比べてもこれから自由な時間を取ることのほうが厳しい。
領主を引き継ぐまでの期間があるのとないのとではだいぶ違うだろう。
だからこそここで何かつかむべきだという意見もわかるがそれでも今だけは家族を優先したいのだ。
「学園卒業後は勿論、国のために精一杯勤めます。ですので今この学生の身の間だけはお時間を頂きたいのです。」
再び沈黙が訪れる。
今度は殿下は下を向いたまま肩をわなわなとさせていた。
「ははははっ。これは傑作だ。そうか、そうだな。うむ、許そう。此度は急な呼び出しに応じてくれて感謝する。また何かあれば相談くらいはさせてもらってもいいか?」
「それくらいならばぜひに。」
「うむ、私も大切な家族に嫌われたくはないからな。」
「ご理解ありがとうございます。」
そういって僕は笑顔なステフを伴い退出する。
生徒会室にはユリウスが一人笑みを浮かべていた。
すると天井からするりと一人の青年が姿を現す。
「殿下、よろしかったのですか?」
「む?お前か。ここは学園内だから護衛は不要だといっておろうに。」
「それでは私の仕事がなくなってしまいますのでご勘弁を。」
「そうか。それでジークハルトのことだが、まぁ仕方あるまい。英雄であると同時に領主であるし、なにより私とも年が一つしか違わぬ。なのに領主としての仕事も今後計画している事業も目を見張るものばかり。だったら少しくらい自由な時間を与えてやっても罰は当たるまい。……なによりマリーに恨まれるのは我慢ならん。ああは言っていたが今頃寂しがっているマリーにも配慮していた面もあるのだろうよ。」
「然様ですか。英雄もまた人の子というわけですね。」
「そんなもの当たり前だろうさ。」
ユリウスの声は長年付き添ってきた護衛からしても喜色を孕んだものであるのは一目瞭然であった。
「マリーよ、よかったな。」
兄としても色々悩んでいるのは知っていたし、心配していた。
そんな妹のことを安心して任せられると改めて確信したのだった。
家族との時間もそうですけど自分にとって大切な時間というのはそれぞれありますよね。
皆さんにとっての大切な時間はどういった時間でしょうか?
私的にですけど学生の頃部活は部活でいろんなことを学べたので良かったと思う反面、強制的にどこかには所属しないといけないというのが嫌でした。
入りたいから入る。家でやりたいことがあるからやらないというのもありなのかな?
賛否両論あると思いますが。
今しかできないことも多くあると思いますので後々後悔をしない選択ができればいいですよね。
とまあちょっと語ってしまいましたがいかがだったでしょうか?
次回更新は来週になりますのでお楽しみに!
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