竜よりも恐ろしい存在
僕は王都で一通りの手続きを終え領地への帰路についていた。
クリムについてはすでに事情は説明済みだ。
他の部族の民と違い特に抵抗をするもことなく話を聞いてくれた。
今回の事情についても彼女は把握した上で承諾してくれた。
「少しデモみんなの役に立てるナラ構わない。」
と少しだけ寂しそうに告げた。
とりあえず悪いようにはしないということだけは安心してくれたらと思う。
そう、またクリムの身柄についてもローレイル侯爵が横やりを入れようとしてきた。
僕を危険な前線に送り込んであわよくば、と考えていたのだろうが失敗。
その上で僕がクリムを連れていくことを伝えるとそれを妨害しようとする。
今回王女殿下に許可は既に得ていたし、名目上は王女殿下と話し合ったうえで頼まれたことを併せて伝えた。
それでもなお引き下がらない侯爵についに宰相が参戦。
問われた問いに答えることもできず撃沈。
陛下の前で恥をかいたことでそれからはおとなしくしていた。
王宮で彼とすれ違った時に見た悔しそうな顔が忘れられない。
ざまあみろ。
そんな風に外を眺めながら思い出しているとクリムから声がかかる。
彼女は今、露出の高かった民族衣装ではなくメイド服を着ている。
そして首には奴隷の証である首輪がつけられていた。
「ジークハルト様、領地はあとどれくらいデス?」
「ん~もうそろそろかな?あ、城が見えてきたよ。」
「あれが、ジークハルト様のお城……。」
キラキラした目で城を見ている。
王城を見たはずなのにそれでもこうして新鮮な反応をしてくれるのが面白かった。
外の世界に憧れていたそうだからこれから出来るだけ色んな場所に連れて行ってあげたいと思う。
間もなくして馬車は家の前に到着する。
「ふぅ~疲れた……。」
息を吐き伸びをする。
領主としては少しはしたなかったかもしれないが、今日くらいは許してほしい。
そんなことを思っていると背後から凍てつくような視線が向けられ急いで振り返る。
「ジぃークさぁまぁ??」
「ジ~~~~ク??」
「……あにさま?」
「ひっ……。」
余りにも恐ろしい形相でこちらを見ていたのはマリー、ステフ、ヒルデの三人。
その後ろには呆れた様子の家臣団。
「どういうことか説明、してくれますよね???」
「……もちろんだよ。」
僕はひくつく頬に鞭を打ち出来るだけ笑顔を浮かべようとする。
馬車から出てきたクリムはというと急に襲われた寒気に怯えていた。
バジリスクのときでももっとしっかりしていたと思うが、この三人はそれ以上に怖いんだろう。
僕もそう思うし。
きっと彼女の中で竜よりも恐ろしい存在として三人には素直になるだろう。
こうして僕はここから数時間事情聴取兼、説教を受けることとなった。
滅茶苦茶疲れていたけれど、こうして皆とまた平和な日常が送れると思おうと自然と顔が綻んでいた。
いかがだったでしょうか?
一応今回で第二部のお話が終わりとなります。
次回からは学園編となるのですが、一旦物語の確認の為明日明後日の投稿はお休みさせていただきます。
申し訳ありません。
また来週金曜日に投稿予定ですのでお楽しみに。
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