抗争の理由
事情聴取のために森の民の生き残りの面々は軽い拘束をされることになった。
というのも話を聞こうにも聞く耳は持たず暴れだす始末。
さすがに可哀想だが拘束させてもらうことになった。
思った以上の確執があるようだった。
そこで何が起きて森の民と争うことになったのか、これを知る必要がありそうだ。
これに関しては王女殿下に直接聞くことにした。
どうやらこのトニトの森の所有権を巡っての争いらしい。
森の民の主張は、この地は古くから森の民が住んでいて自分たちが管理していた。
その為、我らが土地を守るために戦った。
これだけ聞けばヴァルハラ王国が攻め込んだようにも思える。
王国は古くから続く国だ。
この地は文献にも残っていたようで我が国の領地で相違なく、当時他国からの難民を受け入れる土地としてこのトニトの森の奥地に開拓地を設け支援したとある。
最近になり、森へ入った者が帰ってこない事案が数件発生した。
そこで調査をするとどうやら森の主へ供物とされたという。
そのような勝手を許すわけにはいかず、ここ数年ほど争っていたのだとか。
文献が残っている以上こちらの意見が正しいと思うが、森の民からするとただの侵略者に見えただろう。
意見が合わずこうして険悪な仲となってしまったのだ。
正直長い歴史の中こうして事実が有耶無耶になることはあるだろう。
この場合森の民に言えるがだからこそ、正しく受け継ぐことが必要だ。
その為にも知識を身に着け、書物として残すなりするにも識字率はやはり上げたい。
改めてそう思った。
「それでそのクリムという少女の事情は?」
近くにいた事情聴取担当の軍人に話を聞く。
そもそもの発端として少女の存在があるらしい。
森の民の長老、その娘が攫われる事件が起きたそうだ。
森の民は怒りその娘を探すため森から出ることになる。
一時期森の民が街の中で暴れた事件があったそうだ。
恐らくそれがこの時の話に繋がるのだろう。
ちなみにこれは僕が生まれる前の話になる。
そして娘は助かったが、衰弱しておりお腹には子供がいたそうだ。
そうして娘の命と変わるように生まれたのがクリム。
森で暮らすことで親和性が高くなり土の魔法に長け緑の髪を持つようになった森の民。
そこに生まれた憎き外の血を持つ青の髪の少女。
クリムは森での居心地が悪くなり、森の外へでることにした。
多くの森の民は歓喜した。
だが、長老だけは頑なに反対した。
一人娘は連れ去られ、衰弱し自分に託した孫の命。
もう失いたくはなかったのだ。
そうして強引にクリムを連れ戻すように命じたことで事件は起きた。
片言でも街への検問に懸命に説明していたクリム。
だが、やはり外の世界を知らないことで身分証明もできず中に入ることはできなかった。
そうして困った顔を浮かべたとき検問をしていた兵士の首が飛んだのだ。
森の民からすると何が何でもクリムを連れ戻す必要があった。
そして目の前には困った表情を浮かべるクリム。
そこから感がるよりも先に手が動いていたそうだった。
そうして森の民とヴァルハラ王国の抗争が始まった。
「と、これが先頭にいた男の話です。」
「なるほど、ありがとう。」
「いえお役に立てて光栄です。」
そうして再び考え込む。
聞いた話では一つ方法がありそうだった。
だが、その為にももう一度彼女と話をしたい。
僕は許可を得るべくアリアンナ王女の元へと向かった。
続きは明日となります。
お楽しみに!
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