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緑竜対策会議

王宮の会議室は荒れに荒れていた。


「どうしたものかね、全く。」

「またしても竜がでたのですぞ!?何を悠長なことをっ!!」

「じゃあ貴殿は何か策でもあるのですかね?」

「そ、それは……。」


先ほどから怒号が響くも話は一向に進まずただ低迷の一途を辿っていた。

僕は今朝王都に着き、そのまま王城へと通された。

それから間もなくしてこの会議が始まったのだが、大体三時間程だろうか。

ずっと発言する間もなく、もちろん藪蛇をつつくつもりはないので静かにしていたが立ちっぱなしで疲れてきた。

陛下もただこの会議の行く末を見守っている。

陛下と宰相が時折こちらを心配そうに申し訳なさそうに見てくる。

今回呼ばれたのはとある貴族が僕を参考のために呼び寄せたことに起因する。

その貴族というのはローレイル侯爵なのだが。

何か仕掛けてくるのかとも思ったがこうしてずっと何も起きない。

僕も若い公爵家の当主かつ竜殺しという肩書があるので周りの貴族も巻き込みづらいようなのだ。


「で、でしたら有名な竜殺し殿の意見を聞いてみるのは……っ!?」


ついに決めあぐねていた時僕の話題がでる。

その貴族――北位貴族の子爵家のようだが話題を出した瞬間にその場が凍り付く。

そして陛下や宰相、我が家が纏めている西位貴族の面々がその貴族に一斉に視線を向ける。


「ふむふむ、確かに一理あるかもしれませんな。してブリュンヒルド公爵いかがですかな?」


これ幸いとローレイル侯爵がこちらに話を振ってくる。

なるほど、こちらにこれ以上直接ちょっかいを出したとなるとどうしても陛下と宰相から見て心証が悪くなる。

だから誰かが意見を出すことを待っていたのだろう。

こうなるとローレイル侯爵だけが悪いとも言えない。

かといってローレイル侯爵だけを罰するわけにもいかない。

まだ何かしたわけでもないし、なにより言い出しっぺの子爵家の立場が更に悪くしてしまうだろう。

はぁと溜息をつき口を開く。


「……意見と言われてもあれに関しては真似するものでもないし、同じようにはいかないだろう。」


以前の黄龍ファフニールは城よりでかくそれこそ山のような巨体で堅い鱗に覆われていた。

現代的に言うなれば巨大な陸亀を創造してもらうとわかりやすいかもしれない。

今回の緑竜バジリスクはファフニールほどではいが、王都の屋敷よりも大きく森に溶け込む鱗を持っている。

こちらはカメレオンのような擬態能力を持つ巨大な蛇のようなものだといえるだろう。

ファフニールはそのまま獲物を飲み込んでいたが報告によるとバジリスクは睨んだものを石へと変えてしまう力を持つ。

以前は飲み込まれたときに喉元を切り裂いたが、そもそもリスクがでかいしバジリスク相手だと石に変えられるのが先だろう。


「でしたら、なにか妙案はないですかな?」


そんなものあったら真っ先に喋っているに決まっている。

わかっていて聞いているのだろう。

せめて竜殺しとしての名をこれ以上広めさせない為の処置といえよう。

今軌道に乗っている事業もほとんどは竜殺しの治める土地への見分も含まれる。

呼び名は恥ずかしいけれど有効活用するにとても便利なのだ。


「結局この場では出ないのでは?」

「というと?」

「……。」

「どうかされましたかな?」


やってしまった。

長時間この場で立っていたことで少々疲れがでて油断してしまった。

陛下も宰相も苦々しい面持ちでこちらを見ている。

ここまで作戦通りなのだろう。

ローレイル侯爵のにやけ面が恨めしい。

見事誘導されたといえよう。

誰もが思っていた。

竜は確かに脅威だ、そう伝えられている。

だからこそ、実際に見たものも対処方法もわからない。

この場で意見など出るわけがないのだ。

だったら現場に行くしかない。

では誰が行くのか。

誰がそれを対処できるのか。


「はぁ……私が見てきましょう。」

「おお、さすが竜殺し殿!これで我々も安心して眠ることができますとも。」


くそっ、まんまとしてやられた。

こうして僕はバジリスクの住まう森へ赴くことになったのだった。

続きは金曜日投稿予定です。

お楽しみに!


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