王都招集
マリーご立腹事件から数日、僕は三人と街へデートへ行ったり政務を順調に進めることもできた。
王女二人はさすがに懲りたのか自主練習や部屋に籠って研究資料を纏めたりしていた。
あの騒がしさが嘘のように静けさを取り戻したのだった。
――はずだった。
「で、伝令っ!!至急アリアンナ王女殿下にお繋ぎください!!」
突如屋敷に響く声。
何事かと思い確認すると門を任せていた衛兵がボロボロな装いの兵士に肩を貸していた。
さすがにただ事ではないと思いすぐにアリアンナ王女を連れてくるように指示する。
それから間もなくしてアリアンナ王女が到着する。
「お前は……なにがあった?」
「っ、は、はい、森の調査中に森の民の残党が突如襲ってきました。数も少ない為私たちでも問題ないかと思えたのですが、りゅ、竜が現れ全員……うぅ。」
「そうか……。なんと愚かな。」
竜、その言葉を聞いてこの屋敷に住んでいるものは全員反応した。
かつてこの地に現れた竜。
その恐怖は今でも癒えない。
こうして平穏な日々を送れているのも領主のジークハルトのおかげなのだ。
そしてまたその存在が姿を現した。
件の森があるのは北の地なのでこの地からは遠いが、それでも竜は遠いから安心できるような存在ではない。
それこそ一種の災害のようなものなのだから。
「私はすぐに王都へ戻る。そのまま軍を再編して北へ向かう。」
「殿下、後は頼みます……。」
そうしてボロボロな兵士はその場に倒れる。
相当無茶をしていたのだろう。
「よくぞ務めを果たしてくれた。ゆっくり休んでいてくれ。……ジークハルト殿私はこのまま失礼する。これまでの歓待感謝する。」
「いえ、お気を付けて。」
アリアンナ王女はそのまま屋敷を出て馬に跨り王都へ向けて走り出す。
僕は今こうして見送る立場ではある。
隣にはいつの間にかマリーが立っていた。
顔を伺うととても不安そうな顔をしていた。
「ジーク様……。」
「現状は軍がなんとかしてくれるとは思う。でも時間の問題だろう。そうするとすぐに招集がかかるはずだ。そうなるときっと僕も竜と対峙することになるだろうね。」
「そう、ですよね。」
いくら強い軍でも竜を相手にするのだと無理があるだろう。
出来ても時間稼ぎくらいだ。
だからこそ著名な領主は呼び出され軍議が開かれるだろう。
当然そのときは僕も呼び出される。
なにせ名誉なことに専門家なのだから。
貴族は良くも悪くも賢い。
こんなときでも自分の利益を追求するものだって少なくない。
そういったものはこぞって僕に白羽の矢を立てるだろう。
「あの、今日はせめて私たちと一緒に過ごしていただけませんか?」
「それくらいならもちろん。」
ヒルデもステフもこの場にはいなかったがきっとセバス経由で事態は把握しているだろう。
二人も不安なはずだ。
だからこそこの提案を断るなんてありえなかった。
なにより、自分自身が動揺していたのだから。
次の日の早朝、案の定王都への招集がかけられた。
僕は重い足取りで王都へ向かうのだった。
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