お・は・な・し
目の前に不機嫌な婚約者の幼王女様と妹がいる。
そして責めるような目で見てくる元婚約者。
さて、何故このようになったのか。
それはここ一か月ほどの行動を振り返る必要がある。
道路の整備などを進めていたことで王女殿下二人の稽古を先送りにしていた僕だったが、優秀な部下のおかげもあって僕が必要な作業は二週間ほどで終わってしまった。
そこからは当然、言い訳もできないので王女殿下二人に付き合わされることになる。
だが、この二人休みを知らない。
毎日余る時間全てを二人への稽古に充てることになってしまった。
しかもずっと動き回っているのに疲れよりも探求心のほうに意識が割かれているようなのだ。
そうなると当然構ってあげることができず、マリーとヒルデは不機嫌となる。
これに関しては僕も悪いと思っている。
だからこそ、ステフも責めるような目でこちらを見てくるというわけだ。
「ほんっとにごめん!!今度……いや、明日時間作るから皆でどこかに出かけよう!」
僕は言い訳もせずとにかく謝る。
そしてせめて埋め合わせの為にでもどこかに出かけることを提案する。
こういう時は不明確な予定よりもしっかりと指定したほうがいいと思いすぐ明日はどうかと聞く。
最近余裕は出来たとはいえ急遽明日を空けるのは至難ではあるが、それでもやらなければいけない。
「むぅ……はぁ、謝罪は受け取ります。ただ日程は三日後に空けていただければ構いませんので無理はなさらないでください。」
マリーが困った表情を浮かべてから少し考えて提案してくる。
「……兄様、私も嬉しいですが、無理はしてほしくありません。」
ヒルデも困ったような表情を浮かべてから無理しないよう配慮してくれた。
「ふふ、よかったですわね。」
ステフは少し意地の悪い笑顔を浮かべていた。
「ありがとう、今後は気を付けるから。」
「はい、お願いしますね?」
「……ん。」
「三日後が楽しみですわ。」
三人にお礼を言い、三日後の為に今のうちに政務を減らそうと思い執務室へ向かう。
バンッと大きな音が響く。
何かと思えば扉を開けた先にアリアンナ王女とミリネリア王女が立っていた。
「ジークハルト殿、稽古をつけてくれ!」
「ジークハルト様、教えていただきたいことがあります!」
二人は更なる力と知識に思いを馳せ目を輝かせていた。
その光景に僕は不敬にもうんざりとしていた。
今ようやく機嫌を直してくれたマリーの表情が消えた。
そして薄っすらと張り付けたような笑顔を浮かべる。
「姉上方?」
「「ひっ!?」」
「ジーク様は私の婚約者なのです。私と彼の時間を邪魔しないでいただけますか?」
「そ、それは……。」
「で、ですが……。」
ここに来て思う。
多分この二人はまだ懲りていないのかもしれない。
こうやって言い淀んでいるのを見るに稽古や教導も勿論必要なことだったのだろうが、ここまで予定を詰め詰めで入れてきたのはマリーとの仲を邪魔したかったのではないだろうか。
力も知識もつけれて邪魔もできる、そうして二人で協力していたのだろう。
ただでやられない辺りさすが王族だと思う。
だが、
「お二人はどうにも私達の邪魔をしたいようですね。……あれだけ言い聞かせましたのに、これはまたお話が必要なようです。」
「ま、マリー待ってくれ!?」
「そ、そんな!?」
そうしていつの間にか二人の背後を取っていたマリーは二人を連れてお説教部屋へ向かう。
それから数時間城内には王女の悲鳴が響き渡っていたのだった。
いかがだったでしょうか?
続きは来週金曜日となります。
お楽しみに!
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