押しかけ王女(下)
「お前が可愛いマリーを誑かした男ですか!?私と勝負です!!」
僕は頭を抱える。
アリアンナ王女に続いて青いローブに身を包んだクール?な第二王女――ミリネリアが屋敷に押しかけてきた。
次から次へと舞い込んでくる問題にどうしたらいいか本気でお祓いを受けるべきか考える。
この世界にそういった職種があるのかはわからないけども。
「ええと、ご存じのようなのでわざわざ名乗りはしませんが、またいきなり襲い掛かってきたりはしませんよね?」
「そんな野蛮なことするわけないでしょう。」
「ええ、まぁ、そうですよね……。」
貴方の姉は問答無用で襲い掛かってきましたけどね。
余計ないさかいをこれ以上起こしたくないので口にはしない。
「あのでしたら僕もこの状況についていけないのでとりあえず話をしませんか?」
「そんなわけにはいきません。父上が認めたとしても私が認めるかは別の話。だからこそ勝負の結果で決めようではありませんか。」
「……そうですか。それでその勝負とは何をするつもりで?」
するとミリネリア王女は持っていた荷物から何かを取り出す。
「ふふん、それはな私が留学先で見つけたこの’モノクロリバース’で勝負です!」
滅茶苦茶ドヤ顔でモノクロリバースを掲げる王女様。
……うん、どうみてもリバーシだ。
「どうしました、今更怖気づいたのですか?神童と呼ばれた少年もさすがに初めて見たモノでは分が悪いでしょうか?」
いい笑顔で煽ってくる。
ちなみに呆れているだけなのです。
智に長けているとは言えどうしても負けられないから自分が有利であろうゲームで勝負を挑む。
悪いとは思わないけど、僕はまだこの世界だと十二の子供なのだ。
さすがに大人げなくはないだろうか……。
「ええと、わかりました。それではそのゲームで勝負しましょう。」
「待っていてください、マリーは必ず取り返して見せます!!!」
それから半刻ほど時間が経つ。
当然僕もルールは知っているし必勝法もわかっている。
そんなわけで盤面は見事に僕の選んだ黒一色に染められていた。
「そ、そんな!?くっ、もう一度!もう一度です!!こんなところで私は負けるわけにはいかないのですっ!」
言葉だけ見ればとてもいいシーンにも思える。
だが、実際には意気揚々と十二歳に自分が有利だと思った上で勝負を挑み惨敗し涙を流して懇願している。
もう絵面が酷いのなんの。
逆に申し訳なさがこみあげてくる。
それにそろそろ時間的にもまずいと思う。
「それはまた別の機会にしましょう。そろそろまた大変なことになりますので。」
「そうやって逃げる気ですか!?そんなの許せませ――。」
「何をやってるんですか、ミリネリア姉上?」
後ろを振り返ると怖い笑みを浮かべるマリーと疲弊しているアリアンナ王女がいた。
「マリー!?い、いやこれはですね、そのこの人がどうしても勝負をしたいというので……。」
「そんなわけないじゃないですか!そもそも姉上がここにいる時点でなんとなく事情は読めますし。」
「ひえっ。」
マリーはすぐに嘘を見破ると隣のアリアンナ王女を一瞥する。
「全く。二人揃って何をやっているのですか……。すみません、またお部屋をお借りしますね。」
「あ、あぁ。そろそろ夕飯の時間も近いから程々にね?」
「ありがとうございます。それでは行きますよ姉上方。」
「ひっ。」
「ちょっ私もか!?ようやく終わったと思ったのに!!」
「反省の色が見えないからです。ほら早く来てください。」
そうしてマリーに連れられ姿を消す。
「何だったんだ、一体……。」
マリーだけに限らず嵐のような家系なんだなぁと勝手に納得しておくことにした。
間違いなくそれが精神衛生上一番いいと思うから。
いかがだったでしょうか?
いつもはそうでなくても怒らせると怖い人っていますよね。
さて、明日はあの人が何をしていたのかをお送りします。
お楽しみに!
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