贈り物
結局執務室での仕事が終わったのは夕飯の前だった。
みんなが仕事をしてくれていたおかげで今日の予定分はもっと早くに終わっていた。
そこから明日の分や後回しにする予定だったものを先取りして仕事をしていたらいつの間にか時間が過ぎていたのだ。
セバスはそんな姿に呆れながらも付き合ってくれていた。
僕もせっかく仕事が終わったのに新しく仕事をしていたのは驚いたくらいだ。
……多分忙しい仕事をやっていた影響で仕事を詰め詰めでやる癖がついたのだろう。
なにやってるんだか。
空いた時間でプレゼントを渡す予定があったはずなのに。
このままでは仕事人間になってしまうかもしれないと危機感を抱きながらダイニングルームへ向かう。
そこには若干頬を膨らませたマリーと呆れた目を向けるステフに普段無表情でわかりにくいはずなのに明らかに不機嫌なヒルデがいた。
「みんな待たせてごめんね。それと僕がいない間に仕事をしてくれてたみたいでありがとう。」
「むぅ、どういたしましてですけど……遅くありませんでした?」
当然こう返されるとは思っていたが下手に誤魔化してお礼を言わないのも変だし素直に謝ることにした。
「あーそれについてはほんとごめん。せっかくだからって他の仕事にも手を付けちゃって……ごめん!」
顔の前で手を合わせて必死に謝る。
「あらら、ほんと仕方ないですわね。でももうちょっと私達との時間を作れるように配慮してくださいまし。」
「あぁわかったよ。ヒルデもまた時間を作るから許して?」
「……ん、仕方ない。兄様働きすぎは良くない、気を付けてね?」
「うん、気を付けるね。」
なんとか許しを得て食事を開始する。
その間は機嫌を直してくれたみんなと楽しく談笑した。
それから大事なことを忘れないようにとみんなに伝える。
「そうだ、後で渡したいものがあるから三人とも時間をくれない?」
「え、あ、はい、大丈夫ですよ。」
「わかりましたわ。」
「ん。」
「よかった。ちょっと片付けだけしていくから半刻後に、そうだな……僕の部屋に来てくれる?」
了承をもらってすぐ執務室の片づけを終わらせて自室に戻る。
用意していたプレゼントを確認する。
それぞれ髪の色に合わせたリボンをつけていた。
マリーは金色、ステフは銀色、ヒルデは赤色だ。
それからすぐに三人が部屋を訪ねてくる。
「お待たせしました。」
「こちらこそ時間作ってくれてありがとうね。」
「それで渡したいものって何かしら?」
「うん、これを三人に渡したくてね。」
「これは……。」
それぞれに渡したプレゼントは王都でも有名な装飾店で取り扱っている品だ。
マリーには瞳の色である蒼の宝石を金の兎が包んでいるような髪留めを。
ステフには瞳の色である碧の宝石と銀の猫をあしらったブレスレットを。
ヒルデには瞳の色である紅の宝石を中心に赤い花弁を咲かせたようなブローチを贈った。
マリーやステフに精神的に救われたことはもちろんヒルデは唯一の肉親だ。
家族が一人でもいてくれるだけで自分を失わずに済んだ。
だから、三人には何かを贈りたいと常々思っていたのだ。
「三人がいてくれたから今の僕があるんだ。だからその感謝のしるしにそれを。」
「ありがとうございます。大切にしますっ。」
「えぇ、大切にするわ。」
「……する。兄様大好き。」
「あぁ僕もだよ。」
そういってヒルデは僕に抱き着いてきた。
そんなヒルデの頭を撫でてやる。
その様子をみたマリーは羨ましそうにこちらを見ていた。
「ずるいですっ。私も抱きしめてください、撫でてくださいっ。」
「あら、なら私もしてもらおうかしら?」
「えっ!?ちょっ!?」
そのまま向かってくる二人を受け止めつつも三人を支えきれずベッドに倒れる。
皆が満足するまで頭をなでることになったのだが、終わったのは日を跨ぐ前だったのだった。
いかがだったでしょうか?
金曜日は申し訳ございませんでした。
来週こそは余裕があると信じたいっ。
なにせ余裕ができないことには新連載を書く時間がないんですから……。
プロットは今までよりもしっかりできてるとは思うんですけど如何せん……。
おっとっと、長くなりましたが来週もいつか出るだろう新連載のほうもお楽しみに!
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