王宮での話し合い?
一週間が過ぎ王都へ向かう。
今回は僕と護衛の数人だけだ。
以前のこともあり、大人数で出かけるのを避けているためだ。
マリーもステフも気にしてはいなかったが、万が一に備えるのは大事だ。
その代わりヒルデも含めてお土産を期待されているので今からの話し合いよりもそっちのほうが心配になっている自分がいる。
「はぁ。」
ふと溜息をつく。
中々休まる時間がなく働き詰めの毎日だ。
そんな日々でも楽しく過ごせているのはきっとマリー達がいてくれるからこそだろう。
こうして今一人移動しているのが退屈で仕方ない。
そんな様子を護衛達は微笑ましく眺めていた。
普段女性陣に対して無茶振りが酷いとか存在感が薄くなるだとか愚痴を言っていることもあったが、いなければいないでこうして元気がなくなるのだから主人に対して微笑ましく思っても仕方にだろう。
「そろそろ王都へ到着しますので準備を。」
「あぁありがとう。」
そんなぼーっとしている小さな主人に声を掛ける。
未だ十と少しの子にこうして重荷を背負わせることに何も思わないわけがない。
だからせめて、できることがあればフォローしてあげたいと思うのは領地に住む民の総意でもあった。
僕はパンッと頬を少しだけ叩き気合を入れなおす。
とにかく今は宰相と陛下に納得してもらえる説明をしなければいけない。
「頑張ろう。」
ポツリと声に出す。
誰に向けてわけでもないその言葉に周りの護衛も改めて気合を入れなおす。
そのまま王都へ入り王宮へ向かう。
途中馬車の紋章を見て小さな子供が熱い眼差しを向けていた。
今王都で人気の竜殺しの紋章だからだ。
大分脚色されている部分はあれど竜を倒せるだけですごいことなのだ。
だからこそ護衛達も胸を張って歩くことができる。
自分たちの主はすごいのだと、そして妙な輩が近寄ることが出来ぬような人ではないと自らの動きで証明するのだ。
―――――――
王都に来て宰相と陛下と話し合う予定だった。
いや、話し合いの場はちゃんと設けられたのだ。
だが、
「ふむ、これならいいだろう。」
「そうですね、細かいところはこちらの仕事ですので後程正式な決定は送ります。」
「えぇっと……。わかりました。」
そう、資料を渡して一通り目を通したらそれで終わってしまったのだ。
なので話し合うことなどはなかった。
僕はただ呆気に取られていた。
「さすがに最初は思い付きで動かれると困るからな。だからああして意見を纏める様に言ったのだ。」
「そうですな。最後まできちんとしろとはまだ十二で新任の領主に無茶振りする気はありませんとも。」
「それは、ご配慮ありがとうございます。」
「よいよい。それにこの資料しっかりと纏められている。」
「ですな、後は任せるように言いましたがそれほど手直しは必要ないでしょう。」
「というわけだからな。最初でここまで出来れば十分だろうよ。」
「それは良かったです。」
「うむ、また何かあればこうして纏めてくれると助かる。」
「かしこまりました。」
「後は任せておけ。それに……マリーがいないということは何か頼まれてるんじゃないか?そっちに気を回してやれ。」
「そ、そうですね。それではこれで失礼します。」
頭を下げて部屋を退出する。
最後に見た二人の表情はニヤニヤと笑っていたのだった。
いかがだったでしょうか?
次回は金曜日を予定しています。
お楽しみに!
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