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当事者の声

さて、アンブレイス男爵の一見で一難去ったことでやらないといけないことがある。

そう孤児の件、というか主に学校設立についてだ。

何度も皆と話し合ってはいたが良い落としどころを見つけられていない。

つい先日王宮から進捗を訪ねる文書が届いた。

それだけこの一件に注目してくれているのだろう。

できるだけ早めにまとめてしまいたい。


「というわで集まってもらったわけなんだけど……。」


そうしてマリー、ステフ、ヒルデにセバスやメリッサに集まってもらった。

といってもやはり話は進まない。


「んーどうしても私達で話してもこれ以上進まないんですよねぇ……。」

「そうですわね……どうしてもイメージがつかないといいますか。」


二人のいうことは間違っていないと思う。

あくまで僕は前世の記憶があるのでそういった学校の風景や義務教育についてピンとはくる。

だが、それをこの世界に馴染ませるにはどうしてもそのままでは受け入れられない。

だからこうして落としどころを見つけないといけないのだが、そもそもそのイメージがこの世界にいる人にはつかない。

それもそう、あくまで僕の頭の中の構想を伝えているだけなのだから僕ほどイメージがわくわけではないから。

なにより彼女達は貴族として生まれ育っているのだから尚更だろう。


「……ねえ兄様。」

「どうしたヒルデ?」

「……実際に聞くのはだめなの?」

「聞くというと誰に?」

「……孤児。」

「なる、ほど。」


確かに僕達は所謂上の人間である。

そんな上ばかりで相談して実際の教育を受ける立場の話をあまり聞けていなかった。


「確かにそれは盲点でしたな。」

「セバスちょっと急だけどアンケートを取ってきてもらえる?内容はこれを見てくれたらいいから。」

「かしこまりました。」


すぐに用紙に学校設立をしたとして子供に通わせるかどうかと理由を聞くように記し下に余白を設ける。

そうして協力してくれた人には少しばかりのお礼の金銭と口止めを頼むようにした。

セバスは部屋を退出し街に向かう。


「メリッサ、そうだなこの前の孤児で話せるような人はいた?」

「でしたら数名候補はいます。」

「よし、少しその子達をここに連れてきてもらえる?ほんとはこっちから出向きたいんだけど……。」

「いえ、それがよいかと思います。それでは。」


そうしてメリッサも退出する。

なぜ今回ここに来てもらうようにしたのかは孤児に配慮したうえでの判断だ。

今は皆落ち着いているとはいえ、やはり傷が癒えていない子供もいる。

急に大勢で押しかけてパニックになると大変なのでこうして呼び出すことにしたのだ。


「ヒルデありがとうな。助かったよ。」

「……ん。」


ヒルデの頭を撫でてお礼を言うと嬉しそうに頬を染めた。

それから少ししてメリッサが子供を連れて現れる。


「「「し、失礼しましゅっ。」」」

「はは、そんな緊張しなくていいから。」


子供達は緊張した様子で三人とも同じところで噛んでいた。

その様子に僕達はふふっと笑みを零す。

そうして子供達を対面の席に座るように促す。

ソワソワした様子で座ったところで一番年長の男の子―アイルがおずおずと口を開く。


「あ、あの僕達はどうして呼ばれたのでしょうか?」

「少しだけ話を聞きたくてね?今の生活には慣れた?」

「はい、公爵様のおかげで楽しく過ごせています。」

「わ、わたしもです。」

「ミーも楽しい!」


アイルに続いて一つ違いの女の子―カレンとアイルの妹のミリアが肯定する。

この三人は救出の際中部屋に囚われていた子達だ。

どうやら平民の中では魔力が高いようだった。

恐らく部屋の違いは魔力に準じていたのだろうという結論もこの子達のおかげでついた。


「そっか、それならよかった。今回呼んだ件なんだけど―」


そうして僕は今回三人を呼んだいきさつを説明する。

聞いていた三人はとても驚いていた。

そしてそのまま否定の言葉を口にする。


「そ、そんな僕たちに教育なんて恐れ多いですっ。」

「そ、そうです。それにそんなお金なんて……。」

「?」


ミリアちゃんはまだピンときてはいないようだったが二人は教育に対して前向きではない。


「これから孤児がいなくなるような世界を目指すのに教育は必要なんだ。そうすれば口減らしで売られることも減ると思うし。それに一応費用とかはこっちで最初面倒見る予定なんだ。後々働いているときに少しずつ返済してもらうような形かな?」

「そ、そうなんですね。でも、やっぱり学校って貴族様がいくものだし……。」


ふむ……。どうしても学校というのがネックなのかもしれない。

この時代だとどうしても学校=貴族用という概念が根付いてしまっている。


「そうだな、学校というのはここのイメージだと少し違ったかもしれない。職人や家業の訓練所みたいな形で捉えてほしいんだけどどう?」

「職人を育てるための場所ということですか?」

「なる、ほど?」


少しだけイメージが伝わってくれたようだ。

でもこうなると学校という名前自体を変えたほうがいいのかもしれない。

そうだな、職業教育所とかどうだろ?センスないとか言わないでほしい。

それから幾つか説明しつつイメージを補強してどういう条件だと行きたいと思うかとか、どういったことを将来したいか聞かせてもらった。

おかげで僕のほうでも少し頭の整理ができた気がした。

いかがだったでしょうか?

また明日続きを投稿予定です。

お楽しみに!


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