愚直
「.......兄様?なにかあったの?」
クッキーを頬張りながらコテンと首を傾げて聞いてくるヒルデ。
隣でステフがヒルデの口元を拭っている。
マリーは優雅に紅茶を飲んでいた。
どうやら色々考えていたことが表情に出てしまっていたようだ。
「あーその事についてだけど.......」
「失礼します。お待たせしてしまい申し訳ありません。」
少し事情を説明しようかとしたときセバスが戻ってきた。
「ちょうど帰ってきたみたいだから一緒に聞いてみようか。」
「はい。それではアンブレイス男爵ですが―――」
セバスの情報によるとアンブレイス男爵はおそらく踊らされているのであろうことがわかった。
まず、最近噂になっている僕に対する風評被害を流しているのが南位貴族の纏め役ローレイル侯爵であることが確定となった。
では、なんで今回このような暴挙にアンブレイス男爵がでたのか、それは以前起きた出来事に起因するらしい。
それはステフの母親に関する噂が関係している。
かつて美姫とされていたステフの母―-アリシアを巡り、トレイル伯爵がアリシアの幼馴染を嵌めて奪った。
そのことを悔やんだアンブレイス男爵はいつかアリシアを取り返すと息巻いていたそうだ。
それにローレイル侯爵は嘆きアンブレイス男爵を支援することにしたそうな。
そんな時に聞こえたアリシアの死。
またアリシアを救うことができず、嘆いていた。
すると、今度はトレイル伯爵家がつぶれることになる。
せめてアリシアの忘れ形見を保護したいと考えたところにまた噂を聞いた。
アリシアの忘れ形見は落ち目の公爵家に奴隷として売り渡されたと。
それについに我慢の限界を迎えたアンブレイス男爵がこうして乗り込んできたわけだ。
こうして聞くと明らかにきな臭い。
当然セバスもそれを感じたのか、このアリシアの一見と今回の一見を精査したところ、どちらもローレイル侯爵が絡んでいるそうだ。
証拠はほぼほぼ隠滅されているなか、よくたどり着いたと思う。
そうなるとアンブレイス男爵だが道化もいいところだろう。
なにせトレイル伯爵とローレイル侯爵に踊らされていたのだから。
いや、現在進行形で踊らされている最中か。
「……なんとなくそんなきはしていたけども。」
「ほんとどうしようもない人達ですね……。」
「なんだかわたくしの身の回りで迷惑をおかけして申し訳ありません。」
「いや、ステフは悪くないよ。うん。」
「そのアンブレイス男爵もアンブレイス男爵ですね。政治事は苦手のようでしたけどここまでとは。」
「……バカばっかり。兄様を巻き込まないでほしい。」
「ヒルデは手厳しいね。」
一瞬その場が笑いに包まれる。
まあ僕もアンブレイス男爵はほんとどうしようもない人のように思えるんだけど。
かといってこのまま誤解されたまま意味もなく敵対するのもローレイル侯爵の策略に嵌っているようで落ち着かない。
「まずはアンブレイス男爵に話を聞いてもらわないとだね。」
「あの様子でしたけど聞いてくださるんでしょうか?」
「頑固そうですし難しいと思いますわ。」
「僕もそう思うんだけど、やっぱりなんとかしたいよね。」
「……兄様が一発ガツンと入れてあげればいいと思う。」
「さすがにそれはできないかなぁ。」
僕はヒルデの提案に苦笑を浮かべる。
まぁでも最終手段はそうするしかないのかもしれない。
はぁ、やりたいこともやらないといけないことも多いのにホント邪魔ばかりしてくるのはかなわないや。
いかがだったでしょうか?
また明日続きを投稿予定です。
お楽しみに!
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