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アンブレイス男爵

いつものように政務をこなしていたとき部屋に慌ただしく侍女が入ってきた。

セバスと僕は顔を見合わせて何事かと尋ねる。


「ジーク様、アンブレイス男爵がお見えになりました。」

「え?予定入ってたっけ?」

「いえ、そのような予定はありませんでした。」

「ということは、よほどな急用なのかな?」

「どうでしょうか……?急いでいるようでしたが、明らかに平常ではなかったようでした。」

「そっか。まぁわからないけど会ってみるよ。応接室にいるの?」

「はい、応接室に通しております。」

「わかった、ありがとね。……それと念の為に調べおいて。」

「かしこまりました。」


その一言でセバスは指示を出す。

万が一に備えて情報は多いほうがいい。

それをセバスもわかっているから動き出すのは早かった。

そうして僕は応接室に向かう。

正直穏やかな話ではないとわかっているから気が重い。

公爵家にアポなしで訪ねてくるのだからよっぽどだろう。


「ふぅ……。頑張ろ。」


できればそこまで大事ではありませんように。






そんなことを思っていた時期もありました。


「ステファニー嬢をこちらに引き渡したまえ。」


目の前のアンブレイス男爵はこちらを睨みつけるようにそういう。

これは穏やかではいられない。

そもそもこの男は最初から話し合う気はなかったのかもしれない。

それは最初の態度からひしひしと伝わっていたのだから。


――――――――

応接室の扉を開ける。

腕を組んで貧乏ゆすりをして明らかに苛立っている男を目にする。

歳は三十半ば辺りだろうか?

少しだけムッとする。


「ジークハルト・ブリュンヒルドだ。どうやら大分待たせたようで申し訳ない。何分急だったもので許していただきたい。」


暗にお前が急に来るからこっちも都合つけるのに手間取ったんだと言ってみる。


「ふん、どうせ碌なことをしてたわけではないだろうに。なあ外道公爵?随分儲けているのか?」


僕も接待していた侍女もギョッとする。

外道公爵とは最近の噂が広がっている中で子供を売買していると思われて嘯かれている名だ。

いくらなんでも無礼すぎないか?

確かに僕は年若いけども現在公爵家の当主なのだ。

彼は男爵家の当主、こういってはなんだが身分差は大きい。

それに貴族ならば思っていても表情にださないように努めるし、貴族的な言い回しというのもある。

そんなこともお構いなしに直球で言葉をぶつけてくるのは予想外だった。


「……何を言うかと思えば。もし最近の噂に踊らされているなら教えておくが、私はそういったことはしていないぞ。」

「はっ、どうだか。」


そうしてそっぽを向くアンブレイス男爵。

この男は何をしにきたんだ!?

喧嘩売りたいだけなのだろうか?


「ところで今日はいかようでこちらへ?まさかそのようなことを言いたいだけがためにきたのか?」

「そうだな。私もこんなところすぐにでも出ていきたいぐらいだ。」

「では、お出口はあちらですよ?」


あまりの物言いに少し青筋を浮かべる。

表情に出さないようにニコリと笑顔を浮かべて出口を指し示す。

その様子に侍女は顔を青くしていた。

こんな場所に留まらせてすまないと心の中で謝罪する。


「単刀直入に言おう。ここにいる子供達を解放しろ。」

「は?何を……。」

「そしてステファニー嬢をこちらに引き渡したまえ。」

「あ?」


つい殺気が漏れ出てしまう。

侍女はついにひっと声を後ずさる。

アンブレイス男爵も少しだけ驚いた様子を浮かべてすぐに臨戦態勢をとる。


「っ。ついに本性を見せたか。」

「そんなことよりも我が領地に勝手に踏み入れた挙句、保護している者達を引き渡せなどなんと傲慢なことか。そもそも引き渡せと言われて素直に頷くと思っているのか?」

「な、なんだと!?私は()()の境遇を憂いているのだ。ここにいるよりもマシなはずだ。」

「……話にならん。貴殿にはお引き取り願おう。アンブレイス男爵はお帰りのようだ見送って差し上げよ。」


そうして僕は席を立ち、城の警備にアンブレイス男爵を叩き出すように指示する。


「離せ、おい、貴様らはまた私から奪うつもりかぁっ!!」


そんなことを喚きながら退出させられるアンブレイス男爵。

そうしてアンブレイス男爵の姿が見えなくなってから入れ替わるようにステフとマリーが現れる。


「あれは何なのですか?」

「何と言いますか、強烈でしたわね……。」

「……わからない。不遜な態度で子供を解放しろだとかステフを渡せとか言っていたが。」

「えぇ…?」

「私ですか?正直遠目ではありましたが、あのような知り合いはいないのですが……。正直、その気分はよくないですわね。」


本気で困惑するマリーと身震いするステフ。


「だよねぇ。今セバスに調べてもらっているからちょっとそれから今後については考えようか。」


本当に何なのか情報も無いため見当もつかない。

だから僕達は一旦このことを忘れようと勉強中らしいヒルデも誘ってお茶をしてセバスを待つことにした。

やっぱりこうしてのんびり過ごすのはいいなと改めて思ったのだった。

いかがだったでしょうか?

アンブレイス男爵……一体何者なのでしょうか?

また次回金曜日をお楽しみに!


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