王様と話し合い
「ジークハルト殿少しよろしいでしょうか。」
謁見が終わりステフとマリーと借りていた客間でゆっくりしていた時、宰相から呼び出しがかかった。
「はい、大丈夫です。」
「よかったです。それではこちらへどうぞ。」
「二人ともちょっと行ってくる。」
「はい、行ってらっしゃいませ。」
「わかりました!行ってらっしゃいです!」
客間を出てそのまま宰相についていく。
どこに向かうかは聞いていない。
だが、なんとなくだが陛下のもとに向かっているのではないかと思う。
というのも上階に向かっていることや、徐々に装飾が派手な部屋が多くなってきているのもそう思える要因だ。
お互い一言も話すことなくただただ進む。
そして目的の場所であろう扉の前に到着した。
「ここです。」
そして部屋に入るよう促される。
ノックをして名乗る。
「ジークハルト・ブリュンヒルドが参りました。」
「入れ。」
「失礼します。」
扉を開けると、豪華な椅子にグレイス陛下が腰かけていた。
「わざわざすまんな。」
「いえ、陛下のお呼びとあればすぐに駆け付けますので。」
「そうか、期待しているぞ。」
「はっ。」
「さて堅苦しいのもここまで。この場には儂と宰相とお主のみじゃ。こうしてお主を呼んだのは少し話がしたかったからだ。」
「話でしょうか?」
「あぁ。まずはステファニー嬢の件すまなかった。儂自身もあの娘に罪があるとは思っとらん。だが、誰かがトライル伯の罪を負わねば示しがつかん。ましては儂が温情を与えるとそれこそ余計な火種になりかねん。」
「はい、その通りだと思います。なので僕としても最悪の事態を避けられたことを嬉しく思いこそすれそれを恨むことはありません。」
「まぁ全部あのじゃじゃ馬娘がやらかしてくれたからだが。」
「……それに関しては僕からは何も。」
「ははは。苦労かけているようですまんな。」
「いえ、なんだかんだ楽しい日々を過ごせてますから感謝してます。」
この言葉に嘘はない。
強引ではあったがマリーが来てくれてからは楽しい。
だから、婚約に関してもマリーに関しても拒絶することはない。
「そうか、それが聞けて安心した。……正直今回の件で一度ステファニー嬢を犯罪奴隷にした上でそなたに預ける予定ではあった。だが、どうしてもそうなると彼女の人生に影が差してしまう。」
「それは……そうですね。」
「いつも迷惑ばかりではあるが今回に関してはファインプレーともいえるか。いや、差し引きマイナス面が多いか。もちろんマリー自身の性格面でだが。」
「あ、はは。」
うかつなことを言えないので苦笑いを浮かべることしかできない。
それがわかっているため陛下も宰相も笑うばかりだった。
「ところで他の子供たちはどうするつもりだ?」
「それについては少し考えがありまして。」
「ほう?」
「是非とも私目にもお聞かせいただきたい。」
今まで黙っていた宰相も会話に入ってくる。
「えぇと、まだ準備は出来ていないのであくまで計画段階ではありますがそれでもよければ……。」
「構わん。話してみろ。」
「はい、今回の褒章でいただいた資金で学校を建てようかと思っています。」
「学校か?王都にあるだろうに。」
「確かに王立学園はありますが、そこは狭き門かつ貴族が多数を占めるものです。今回の子供達の事情を聞くと口減らしで売られたもの、家族を失ったものが大半です。そういった子供たちの受け皿が必要かおもいまして公爵家が建てる公立学校を設立しようかと思っています。」
「それはつまり平民に向けて教育を施そうと?」
「はい。子供に教育ができればいずれは働き先の選択肢も多くなりますし、自立を促すこともできます。そう簡単には捨てられることも少なくなるかと。」
「ふむ……。なるほどな。ちなみにだが子供を孤児院に預けようとは思わなかったのか?」
「ここに来る前に少し調査したのですが、孤児院で受け入れられる子供にはどうして限りがあること。現状すでに飽和状態だったので考えから外していました。」
というのもこの学校を作ろうという計画も以前から考えていたものだ。
この世界に来てからどうしても平民の働き口をどうにかしたいと考えていた。
そのうちの計画の一つがこの学校設立だ。
「一つ質問が。確かに学校に行くことができればいいでしょうが、費用を払えず結局通えない子供が多数を占めるなんてことはないのですか?」
「それに関しては奨学金制度を設けようかと。」
「しょうがくきん?」
「えっと簡単に言うと在学中は支払いを免除して働き出してから数年に渡って返済してもらうような形ですかね?」
これに関しては前世の知識をかじった程度なのでまだ詰め切れていない部分が多い。
「ふむ、なるほどな。だが、結局働き口が見つからなかったら返済できず踏み倒されるのではないか?」
「確かにそうかもしれません。いっそ費用をゼロにしようとも考えていたんです。」
「それは負担が大きすぎるだろう!?」
「さすがにそうなると各地から申し込みが殺到しますね。」
「そうなんですよね。ここら辺は戻ってから二人と相談しつつ検討しようと考えてます。」
「そうか。まあよい。学校設立自体は悪くないとは思う。すべて決まったら儂か宰相に報せてくれ。もちろん相談も受け付けよう。」
「ええ、気軽に相談してください。」
「恐れ多いですが、ありがとうございます。」
「よいよい、義息子になるかもしれないのだ。どんどん頼ってくれ。」
「そうですよ、行き詰ったときはぜひ身近な大人を頼ってください。」
「……はい。ありがとうございます。」
その言葉を聞いた瞬間少しだけ涙が溢れそうになった。
そっか。いつの間にかステフとマリーにヒルデだけを家族だと思っていたけど陛下もそうだけど身近にも支えてくれた人はいたんだった。
そうして陛下と宰相との話し合いは終わった。
僕は暖かな気持ちを抱いて二人のもとへ戻っていった。
いかがだったでしょうか?
また明日続き投稿予定です。
お楽しみに!
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