褒賞と罰と……やっぱり幼女ェ
屋敷に戻り子供たちにご飯を用意してもらうよう手配する。
すでに屋敷の人間は全員快復していた。
血を流していたメリッサも戻ってきたときには元気に出迎えてくれていた。
僕の応急処置のあと近くの治療院の人を派遣してもらって戻ってくるまでに動けるようにしていたらしい。
今日はゆっくりすればいいのにとも思ったが、なんでもおひぃ様を元気にお出迎えするのが使命だとか。
あの時の目は本気だったのでそれ以上は何も言えなかった。
そうこうしているうちに王宮から使者が訪れた。
陛下からすぐに謁見せよとのことだった。
「わかりました。それじゃ二人ともちょっと王宮に行ってくるよ。」
「あ、ジークハルト様。陛下からステファニー様もご一緒に来るよう仰せつかってます。」
「……そうか。わかったすぐに向かう。」
「はっ。それでは。」
やはりというべきかステフも無関係ではいられない。
せめて最悪の事態にはならないよう僕がしっかりしないと……。
そんな不安に駆られているとステフがそっと手を握ってくれた。
「私は大丈夫です。ですのでジーク、無茶だけはしないでくださいね?」
「そう、だね。」
「あ、ちなみにですが私も同行します。」
「え?」
「え、とはなんですか。そりゃ父上はお呼びじゃないのかもしれないですが、わたしの家なんですからいつ帰ろうがわたしの勝手です。」
「そりゃそうだろうけど。」
「大丈夫です、悪いようにはなりませんから。」
「うん、わかった。皆で行こうか。」
とてもいい笑顔で答えるマリーを見てこれは何を言っても無駄だと悟るジーク。
きっと何かやらかす気なんだろうけど悪いようにはならないといっているので信じるしかない。
―――――――――
謁見に相応しい服装に着替えて王宮に向かう。
ここまで不安な気持ちで王宮に向かうことはそうそうない。
王宮へ入ると案内役の侍女が対応してくれる。
「ジークハルト様は応接室でお待ちください。ステファニー様はこちらへ。……えっとマリアンヌ様は―。」
「わたしは自由にさせてもらいますね。」
「……はい。」
この場で二人とは別れる。
案内の際にマリーの姿を見てとても困った顔をしていたのは少し面白かった。
それから少しして謁見の間に通される。
あれから二人が戻ってくることはなかった。
更に不安が募るが仕方ない。
そうして謁見の間を進む。
今回は以前の謁見に比べて貴族が多く出席している。
王都での事件ということもあって重大さが大きいことと王都に屋敷を置いている貴族の在籍がたまたま多かったようだ。
だからこそ、油断できない。
「ジークハルト、面を上げよ。―よい、面を上げよ。」
「はっ。ジークハルト・ブリュンヒルド、陛下の御前に参上いたしました。」
「うむ。先に続いて此度も活躍見事である。」
「ヴァルハラ王国の貴族として当然のことです。」
「そうか、若き英雄がいてくれるのは安泰だな。」
「もったいなきお言葉。」
「今回のことで王都の闇ギルドを掃討できたのは僥倖である。なにか望むものはあるか?」
「ありがとうございます。……では、一つお願いしたいことがございます。」
「ほう、なんだ?」
「トライル伯の娘―ステファニー嬢の安全を約束していただきたく。」
瞬間謁見の間が驚愕に包まれる。
ひそひそと何を考えているのかだとか英雄と言われてもやはりまだ幼いとか様々な言葉が聞こえる。
自分でも無茶苦茶言っている自覚はあるが、それでもここは譲れない。
「静まれっ。―ジークハルトよ。言っていることが分かっているのか?知っていると思うが、トライル前伯爵は我が膝元で事件を起こしただけでなくマリアンヌの誘拐にそなたへの殺害疑惑までかかっているのだ。だというのに本人は生死不明。誰かが責を負わねばならん。」
「はい、それを承知でお願いしたく。」
「……ふむ。」
陛下がまっすぐとこちらを睨んでいる。
陛下としても思うところはあるのだろう。
だからこそ僕は目を反らすことができない
「ステファニー嬢については王家で身柄を預かる。その上で本人に叛意がないか見極めよう。」
「……かしこま―「いえいえ陛下それはよくありませぬ。よろしければ私がその娘を預かり教育しましょう。」
僕の言葉を遮るように口を挟むものがいた。
確か名前はローレイル侯爵。
この男も余りいい噂を聞かない。
南部の貴族を纏める名門ではあるが、そもそも南部は暗い噂が立ち込める魔境のような場所。
トライル伯も南部貴族だったし、トライル伯がステファニー嬢を嫁に出す場所が無く牢に閉じ込めたならこの男は動かなかったということ。
それが今更口を挟んだのであればなにかしらあると思わざる得ない。
それにローレイル侯爵を口切りに他の貴族連中も我こそはと名乗りを上げていく。
ふざけるな、ステフはモノじゃないんだぞ。
「陛―「ちょっと待ったぁですわ!」
僕が割って入ろうとしたとき謁見の間がバーンと音を立てて開かれる。
そこにいたのはマリーとステフだった。
僕は二度口を挟まれ少し悲しくなり、陛下と宰相はまたかと頭を抱えていた。
「父上、お願いがあります。」
「今は謁見の最中なのだが。」
「それに関係することですので。」
「はぁ、なんだ言ってみろ。」
「お姉―じゃなkったステファニー様はわたしが預かります。」
「なんだって!?」
またしても謁見の間が喧噪に包まれる。
「王女殿下それはいけませぬ。あのトライルの娘、何をしでかすかわかったものではありませぬ。万が一に備えて対応できる私にお任せすべきです。」
そうしてまたローレイル侯爵が口をはさむ。
「ローレイル候、忠言はいいことですが今わたしはお父様と話しているのです。邪魔しないでください。」
辛辣な言葉をローレイル侯爵に浴びせる。
自分も口挟んでいるじゃないかとも僕は思ったが、ローレイル侯爵は当然言い返せないだろう。
「ですが、確かにわたしには力はないのも事実。」
「では―」
「まぁわたしには英雄であるジーク様がついていますので問題ありませんわ。」
「それはどういう?」
「あら、知りませんの?わたしは今ジーク様と婚約していて領地にお邪魔させていただいてるんです。」
「なっ!?」
喧噪が大きくなる。
「あの噂は本当だったのか!?」
「まさか、そんな!?」
「またブリュンヒルド家が―」
色んな憶測まで飛び交う始末。
「静まらんかっ!」
さすがに見かねたのか再び陛下の怒号が響く。
「……この際だ、ブリュンヒルド家と王家で縁談がでているのは事実だ。本当は今度の披露宴で発表する予定だったのだが―。」
そうしてちらりとマリーを見ていた。
「まあよい。そういった事情もある故マリアンヌに預けても問題はあるまい。」
「ですが、今回もブリュンヒルド家の失態で―」
「くどい。ローレイル候よ、我の決定に不満があるのか?」
「……いえ、滅相もございません。」
ここではいと言えばそれこそ南部貴族が何かしら叛意を持っているとも思われかねない。
「ただ、自由の身にさせるわけにもいかない故少し枷をつけさせてもらおう。ステファニーよ構わぬな?」
「はい、この度の父の件申し訳ございません。」
「よい、事情は少し聞いている。ジークハルトよ、二人を頼むぞ。」
「はっ。必ずや。」
「うむ。それとマリアンヌよ。」
「はい?」
すべて丸く収まっただろうと自慢げに無い胸を張っていたマリーに突如声がかかる。
「この際だ、聖女と呼ばれたステファニーに礼儀作法を教えてもらうといい。ステファニーよこのじゃじゃ馬娘を頼むぞ。」
「はい、お任せください。」
「お父様!?!?」
こればっかりはマリーが悪いと思う。
というか僕も全然いいとこなしで泣きそうだ。
こうして謁見は終わった。
僕は褒章を貰い、ステフは魔道具による魔力の枷を付けられマリーの侍女として二年の奉仕を命じられた。
ちなみにマリーはこの後陛下にこっぴどく怒られ罰として多くの課題を言い渡されたとか。
手伝ってほしいといわれたが渋っていると泣き出しそうだったので即座に了承した。
マリーはとてもいい笑顔でステフも苦笑いだった。
……僕は甘すぎるんだろうか?
時々将来が不安になるのだった。
いかがだったでしょうか?
最後にいいところ全部持っていく幼王女……。
この二人に将来尻に敷かれそうなジークは頑張ってほしいですね。
さて、また続きは来週金曜日となります!
お楽しみに!
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