目標
「どういうことなんだ!?」
思わず報告に来た警備隊に詰め寄る。
警備隊は怯えたように状況を詳しく説明する。
「そ、それが公爵の仰られた場所に向かうとそこには人の姿がなく……。どこかか抜け出した痕跡もなかったのです。唯一残っていたのはおびただしい量の血痕でして、それがトライル伯のものなのかはたまた他の指名手配者なのかも判別がつかなかったのです。」
「そうか、詰め寄るような真似をしてすまなかった。」
「い、いえ、お気持ちはわかりますので。」
僕が詰め寄ったのにも理由はある。
あの工場跡に結界を張って中からは逃げられないようにしていた。
万が一結界が壊されることがあれば反応があるはずなのにそれもなかった。
結界の解除も警備隊の一人に鍵となる魔道具を渡していたし、それ以外での解錠も確認していない。
だから警備隊がしくじって逃がしてしまったのではないかと疑ってしまったのだ。
こうなると少々ややこしくなる。
というのもトライル伯の罪の所在だ。
本人が姿を消してその生死もわからないとなると今回の騒動の責任を誰が負うのか。
ちらりと横を見る。
ステフとマリーは仲良さげに談笑している。
トライル伯に血縁者は現状娘のステファニーただ一人。
つまりステファニーがなにかしら責任を負わされる可能性が高いのだ。
「陛下に頼んだらなんとかしてもらえないかな……。」
そんな希望的観測を口にする。
本当にどうしてこうも厄介ごとが舞い込んでくるんだろう。
誰かが意図的にステファニーとの仲を裂こうとしているとさえ思ってしまう。
いや、そんなはずはないだろう。
あまりの偶然の重なりでありもしないことを考えてしまう。
「ジーク様?」
「あぁ、どうしたマリー?」
「いえ、なんだか顔色が良くなかったようですので心配になりまして……。」
「そう?ステフ僕の顔色そんなに酷かった?」
「えぇ、私の目からしてもよくなさそうに見えましたわ。」
「なにかあってもわたしが何とかします!ですのでジーク様はどっと構えていてください!」
「……そっか。ちょっと色々考え過ぎてたかもしれない。心配かけたね。」
「いえ、気にしないでください。」
「とりあえず報告は警備の人にしたから何かしら招集がかかるまで屋敷で休んでいようか。」
「そうですね、子供たちもお腹が空いている子も多いですしそれがいいと思います。」
「わたしもメリッサの様子が気になります。」
「そうだね、それじゃ戻ろうか。」
「「はい!」」
皆で屋敷に向かう。
行き場のない子供もとりあえずは我が家で保護することになった。
話を聞いた限り、口減らしで売られた子供に親を殺され攫われた子供ばかりだったのだ。
幼いこともあって状況を上手く把握できていない子供もいた。
ずっと泣いて母親を呼び続けていた子だ。
その子はずっとマリーとステフがあやし続け今は二人の間で眠っている。
いつかはこうした子供がいなくなるような幸せな国にしていきたいな。
その為にもやることは多い。
まだ言っても僕は十二歳。
竜殺しでなんとか箔はついているがそれでも周り全員から認められているかと言われればノーだろう。
武によってついてきてくれる人もいるが、僕はあくまで領主だ。
武だけでは民はついてこない。
だからこそ認められるにはまだまだ時間がかかるだろう。
それでも僕は立派な領主になれるよう努力しようと改めて誓ったのだった。
いかがだったでしょうか?
ステフがどうなるのか……については明日投稿予定です!
お楽しみに!
また、ステフの再登場に伴い一人称を分かりやすくしようかと思います。
ジークハルト→僕
マリアンヌ→わたし
ステファニー→私
ちなみにそれぞれの呼び方についてはまた後程!
それではまた明日!!
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