不穏
「お久しぶりです、ジーク様。お会いしたかったですわ。」
ステフはそういってにこりと微笑む。
「僕も会いたかったよ、ステフ。」
「え、お姉様がステファニー様だったんですか!?」
「お姉様?」
「あ、いえ、こちらの話ですのでお気にせず……。」
そういってマリーは顔を赤く染める。
何があったかは気になるが今は一旦おいておこう。
うん、それがいい。
「この度は父の暴走に巻き込んでしまい申し訳ございません。」
「いや、ステフが気にすることじゃないよ。それにここにいたってことは何かあったんだろ?」
「はい、お恥ずかしながら父の蛮行を止めようとしたのですが力及ばず……。そのまま父によってここに放り込まれました。」
「……そっか。ステフも大変だったね。」
「いえ、すべては私の力不足が招いたことですので……。」
トライル伯がこの計画をしたときたまたまステフは聞いてしまったらしく止めに入った。
が、その声は届かずそのままこの牢に閉じ込められた。
どうやら僕との婚約破棄の後には評判も落ちたことで縁談も決まらず、厄介になったらしい。
どうせならと王女を捕らえた後の世話係として置かれていたとか。
そうしてすべてが終わった後は王女共々他国に売り飛ばす予定だったらしい。
正直ここまで荒唐無稽な作戦まともだとは思えない。
「私にも何が何だかわからないんですが、父は急に何もないところに向かって独り言を話していたのです。」
「むむむ、それは奇妙ですね。」
「そうだな、何かに取りつかれてでもいたのか?」
「わかりません。ですが、あの大氾濫が起きてから父の様子が拍車をかけたようにおかしくなっていったのは間違いないかと。」
「そうか、それは本人に直接確認しないといけないな。」
「この度は当家が粗相をし申し訳ございませんでした。」
「いえ、むしろ私も助かったのでおね―ステファニー様が気にしないでください。」
「ありがとうございます。」
様子が更におかしくなったトライル伯か。
あの一見がただの自然現象ではないとは思っていたが思った以上に根が深いのかもしれない。
そう思い腰に差した剣を見る。
あの時聞こえた声は呼びかけようとも未だに聞こえない。
あの声の主は何か知っているのだろうか?
そこで考えを辞めかぶりを振る。
答えてくれるかわからないものに頼らずもっと自分で本腰を入れて調査する必要があるな。
領地に戻ってからすべきことを定める。
「そうだ、ここに来る途中で子供を待たせていたんだ。移動しよう。」
「それは大変です。はやく外へ出して安心させてあげませんと。」
「わかりました。すぐに移動しましょう。」
そうして大部屋を出て中部屋の三人と小部屋の七人を解放して外を目指す。
部屋の大きさで分けられていたことにふと疑問を覚える。
だが、今は気にする必要はないと思い思考を放棄する。
「わっ、外だ!!」「出られた!」「怖かったよぉぉ!」
外の日差しを受けて子供たちは一斉に声を上げる。
その声に反応して街の警備がすぐに駆け寄ってくる。
身分を明かしいくつかの質問に答えつつ中の構成員の身柄の確保と港に残しているトライル伯を連行するよう促す。
これで一見落着だ。
そう思っていた。
それから数刻後に確認した警備から聞かされたのはトライル伯の生死不明の知らせだった。
いかがだったでしょうか?
なんだか不安な要素がちらほらと……。
続きはまた明日投稿予定です。
お楽しみに!
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