罠
馬車に揺られて移動すること数十分。
場所は王都の端にある港の一角。
倉庫が立ち並ぶこの場所はお世辞にも治安がいいとはいえない。
他国からの積み荷も入ってくるし、商人も多く行き来している。
そんな中でも人が寄り付かない廃棄所がある。
今回向かっているのはどうやらその場所のようだ。
本当にあからさま過ぎて苦笑する。
腰に下げた剣――魔剣グラムンクをちらりと見る。
一見儀礼剣にも見えるくらい丁寧な装飾がされているのにその性能は凄まじい。
今回の護送の際にも特に咎められることがなかったのは本当に良かったと思う。
「ジークハルト様。到着しました。」
「ありがとう。」
一応は丁寧に接してくれる御者。
微かに見えた表情は決して穏やかではなかった。
「あぁ待っていたぞ、ジークハルト。」
「トライル伯爵、お久しぶりです。」
「あぁ本当に。今日という日が待ち遠しかったとも。」
「それは、光栄ですね。」
まずはお互い確信に触れることはなく挨拶をする。
「ところで周りの方々はどちら様でしょうか?」
そうしてトライル伯の周りに陣取っている集団に目を向ける。
明らかに荒事専門の人達だろう。
「ふむ、最近何かと物騒だからな。こうして護衛をかって出てくれたわけだ。そちらは一人なのか?」
「ええ、おっしゃられた通り最近物騒ですので留守をお願いしています。」
「そうか、そうか。それは安心だな。」
なんだろう、さっきから少しだけ違和感を感じる。
まるで僕がここに一人で来ることが都合いいかのように。
それは当然僕を叩きのめす意味でもあるだろうが、それ以上に時間を稼ぐためだけにいるかのような……。
「どうした?話したいことがあるんだろう?」
「……えぇ、それはもちろん。ですが、なんとなく僕の勘が今はそんなことよりも大事なことがあると言っている気がするんですよね。」
「ほぉ、それはなんだろう?ぜひ教えてくれまいか。」
そうしてジリジリと周りの男たちが詰め寄ってくる。
「もう少し私と歓談していようじゃないか。」
「ちっ、そうくるかっ。」
男達が持っている装備はどれも殺傷能力が高いものではない。
どちらかというと拘束力が高いものだろう。
それがきっと違和感の正体だったのかもしれない。
僕を殺す為に人を集めて罠に嵌めるのだと思い込んでいた。
だが、これは僕をこの場に留めることで別の場所で計画を進めているのだろう。
そういう意味では完全に罠に嵌ったともいえる。
僕はグラムンクを抜き男達をすぐさま気絶させていく。
実際この数でもどうということはない。
だが、今は時間が惜しい。
「邪魔をするなっ!」
まるで獣が咆哮をあげたかのように叫ぶ。
一瞬怯んだ隙に次々と倒す。
「い、今更遅いんだよっ!!」
トライル伯は股間を濡らしながら後ずさる。
「とりあえずお前のことは後回しだ。」
そのままトライル伯を気絶させる。
全員を拘束する時間も勿体ない。
だから、この倉庫を牢に見たててここから出られないように魔法を使って細工をする。
「頼む、マリー無事でいてくれ。」
きっとここにはいない連中の手が既に屋敷に伸びている。
この広い王都の中から居場所を見つけなければならない。
まずは屋敷に向かって情報を集めようと考え行動を開始する。
今は何よりもマリーの身が心配だった。
皆様こんばんは、一週間ぶりですね。
それと古戦場お疲れ様でした。
どうにか8万位ボーダーには入れました……とそんなことはグラブルを知らない人からすればわからない話ですよね。
さて、今回の話は少し短めです。
というのも現状毎週土曜の9時一回のみの投稿になっています。
正直私としてもこれは少なすぎると感じていました。
なので来週から毎週金土日の九時にそれぞれ投稿しようかと考えています。
より皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
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