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誘い

僕たちは再び王都を目指していた。

というのもある日王都に誘う手紙が届いたからだ。

差出人はトライル伯爵。

この手紙に屋敷の人は全員驚いた。

何度も送っていた手紙の返信は今までなく、最後に送ったのは数か月前の話だ。

そろそろこちらから動く予定だったのも含めて予想外過ぎたのだ。

そして問題があった。

それは手紙の内容だ。

曰く、再び話し合う場を設けたい。我が家とそちらの行く末を決めるものだ。ぜひとも参加していただきたい。場所はこちらで指定する。王都に着いたら案内するものを寄越そう。いい返事が聞けることを期待している。

というものだった。

どう考えても胡散臭い。

ちなみにこの手紙を見てマリーは憤慨していた。


「ここまで自分勝手な手紙見たことありません。なにより悪いと一切思っていない辺り人が知れてますねっ!!」


正直僕もいい気持ちではなかったのだが、むーと声を出して怒りを表現していたマリーが可愛くて癒された。

それから当然ここまであからさまに怪しい誘いに乗る必要はないと家臣団は満場一致でこの手紙を無視するように進言してきた。

でも僕としてはこのチャンスを逃したくはなかった。

ようやくステフとまた会える可能性が出てきたのだ。

罠だとしても行く価値はあると僕とマリーは言った。

これが最後で今後コンタクトを取ることはきっとできないだろう。

そうなると強硬手段に出るしかなくなる。

別にトライル伯に今更どう思われようと構わないが、これからの社交を考えると僕もマリーもステフも余計な諍いを起こしたくはない。

ただでさえ若くなめられているのにそこによく思われない噂が付き纏うのは勘弁だ。

そうして無理矢理ではあったがこの誘いに乗ることになった。

最後の最後まで家臣団は納得はしていなかったが、最後の我儘を貫かせてほしいと頭を下げて頼んだ。

皆困った顔をしていた。

家臣団もステフの件をどうにかしたいというのは思っていてくれていた。

それこそ僕のいないところでなんとかしようと会議をしていたほどだ。

それでも心配してくれてこうして反対していたのだから申し訳ない気持ちはある。


「この件が片付いたら皆さんに何かしらお詫びをしませんとね。」


そうして隣で微笑むマリー。

そう、今回の王都への誘いにマリーも付いてきているのだ。

これには僕も反対したのだが、マリーを止めることはできず……。

何を言っても華麗に躱され反撃を食らうのだ。

僕はきっと将来は尻に敷かれるんだろうなと遠い目をしていた。

家臣団はもう手遅れだと言っていたがそんなことはないと思いたい。


「そうだね。最近頑張ってくれてるからお酒を多めにでも買って帰ろうか。きっと喜ぶだろう。」

「ですかね?お酒の良さはあまりわからないですけど。」

「あはは。まぁ僕たちはまだ飲めないからね。」


この世界ではお酒は成人の15歳になってからだ。

お酒を楽しむためには後四年もある。

どうしても飲みたいということはないからいいのだけど、ふとしたときに飲みたくなるのだ。

まあ後数年の我慢だ。


「改めてだけど屋敷から出ない約束は忘れないでね?」

「もちろんです。私は屋敷で()()()のお帰りをお待ちしています。」


これはマリーと交わした絶対条件だ。

王都への同行を断れないとわかってせめてトライル伯の元へは連れて行かないようにと説得した成果だ。

王都の屋敷でマリーには待っていてもらい、無事この会談が終わった暁にはステフを連れて屋敷に帰ると。

その時待っている人がいてくれたら嬉しいと伝えたらそれはもう大喜びで承諾してくれた。

何でも奥さんみたいでいいですねとのこと。

メリッサからは少し非難の視線を浴びたが許してほしいと思う。

万が一にでも危険な目に合わせるわけにはいかないのだから。

それが彼女も分かっているから言葉にはしなかったのだろう。


「そういえば王都の屋敷は初めてです。」

「確かにそうだね。以前はすぐに馬車で領地に帰ったから……。」

「そうです!ちょっと楽しみなんですよね。」

「といっていも何もないけどね?」


今王都の屋敷には物が無いに等しい。

最低限のもの以外全て売ってしまったからだ。

人材も維持するための最低限の人を残しているくらいだ。

領地の経営のためだったのでこればかりは仕方ない。

最近ようやく経済も回復してきたのでそろそろこちらにも物を置きたいと思っていた。

現状は忙しいことを理由に免除されていたが、公爵家として屋敷に人を招いてパーティを開くくらいはしないといけない。

今のままではさすがに人を呼べない。

三人で幾らか見繕うのもありかもしれない。

そうして未来を思い描く。


それから少しして王都に到着した。

そのまま屋敷に向かう。

すると屋敷の前にトライル伯の迎えと思われる馬車が止まっていた。


「ジークハルト様ですね?お迎えに上がりました。こちらに。」


領地から移動してきてすぐなので、少しは屋敷で休ませてほしいとも思ったが従うことにする。

マリーも少し不満げだったが、すぐに期限を直してメリッサを伴い屋敷の敷居を跨ぐ。

そうしてこちらに振り返り背伸びする。


ちゅ。


そっと頬にマリーの唇が触れる。


「ジーク様、行ってらっしゃいませ。お帰りをお待ちしてますね。」

「ああ行ってくるよ。」


突然で驚いたが顔に出来るだけ動揺を出さないように対応する。

後ろでメリッサはにやけていたがバレていないと思いたい。

そのまま馬車に乗り込み指定の場所へ向かう。

この先に何が待っているのかはわからない。

本当にトライル伯が待っているかもしれないし、罠かもしれない。

だが、何が待っていようと必ずステフを連れてここに戻ってくる。

そう密かに自らに誓うのだった。


今日から古戦場ですね……。

私は今いそいそとたけのこを集めているはずです……。

というのもこれも予約投稿だからですね。

未来の自分が頑張っていることを祈っています。


さて、今回からついにステフとの関係改善?に向けて動き出します。

この顛末がどうなるか……。お楽しみに!


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